日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] ハイパフォーマンスコンピューティングが拓く固体地球科学の未来

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:堀 高峰(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、八木 勇治(国立大学法人 筑波大学大学院 生命環境系)、汐見 勝彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:堀 高峰(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

14:15 〜 14:30

[STT39-03] 千島海溝の巨大地震に対する広域長周期地震動評価

*山本 優1西本 昌1日吉 善久2縣 亮一郎2、廣部 紗也子2堀 高峰2 (1.大成建設株式会社、2.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:長周期地震動、千島海溝沿いの巨大地震、3次元有限要素法、関東地方

将来の発生が懸念されている千島海溝沿いの巨大地震では,内閣府(2021)により被害想定結果が公表されており,甚大な被害が予測されている。長周期地震動の発生により,超高層建築物や免震建築物などの固有周期の長い建築物に大きな影響を与える可能性がある。
長周期地震動は,振幅を保ちつつ遠方まで伝播しやすいという特徴がある。2003年の十勝沖地震では震源から200km離れた苫小牧において石油タンクのスロッシング被害が生じた。2011年の東北地方太平洋沖地震では,700km離れた大阪府咲州庁舎にて長周期地震動による被害が生じた。そのため,巨大地震に対しては,震源周辺の地域のみならず数百km以上離れた場所における長周期地震動の発生可能性を確認しておくことが重要である。
そこで、筆者らは,千島海溝沿いの巨大地震に対し、震源周辺の北海道地方のみならず遠方の関東地方まで含めた3次元有限要素法による広域長周期地震動シミュレーション評価を実施した。西本ら(2022)は,北海道地域を対象に多様な震源モデルを構築した長周期地震動の検討を行っており,これらの震源モデルを参照して根室沖,十勝沖を対象に震源モデルを構築した。
地震動評価は,地震動計算用大規模3D-FEM計算プログラム「E-wave FEM」を用い,スーパーコンピュータ「富岳」で計算した。地下構造は地震本部の全国1次地下構造モデルを用いた。震源から北海道全域及び関東地方を含む長さ640km,幅1280kmの範囲で3次元FEMモデルを構築した。ただし、東経147度より東については、千島海溝の海溝軸に沿って外挿した。計算対象周期3.3秒以上で1波長あたり概ね5要素の大きさとなるよう,四面体2次要素に分割した.メッシュ分割には「地球シミュレータ」を用いた.
以上の解析手法,地下構造モデル,震源モデルを用いて長周期地震動の計算を実施した。これらから,震源パラメータの不確実性による長周期地震動の発生傾向及び,関東平野における長周期地震動の振幅の増幅特性を分析した結果を報告する。

謝辞:本研究は,文部科学省「富岳」成果創出加速プログラム「大規模数値シミュレーションによる地震発生から地震動・地盤増幅評価までの統合的予測システムの構築とその社会実装」(JPMXP1020200203)の一環として実施されたものです.また,スーパーコンピュータ「富岳」,海洋研究開発機構の地球シミュレータの計算資源の提供を受け,実施しました.本解析結果は,東京大学地震研究所が開発中のコードを「富岳」PJにおいて提供していただき,JAMSTECが独自に改変・運用し得られたものです.また,地震調査研究推進本部の全国1次地下構造モデル,防災科学技術研究所の深部地盤構造を使用しました.関係各位に記して謝意を表します.