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[SVC26-11] SfM-MVS 解析による1977-82年有珠火山活動の地表変位計測
キーワード:有珠火山、SfM-MVS解析、地表変位、数値表層モデル、1977-82年有珠火山活動
1977-82年の有珠火山活動では、有珠火山山頂・北麓周辺で著しい地形変化が生じた(Okada et al., 1981; Yokoyama et al., 1981; Katsui et al., 1985)。山頂周辺の変位は、空中写真・1/2,500-1/5,000地形図による地形判読を基に詳細に調査されてきた。一方で、北麓周辺の変位は、主に辺長測量や現地での断層変位計測により調査され、空間分布の調査は概略的なもの(守屋ほか, 1982; 今川,1984)に限られている。また、北東麓では約60-80 mの水平変位を示す東丸山断層(山岸ほか, 1982; Kadomura et al., 1983)が生じたが、これらの研究結果にこの断層変位は十分に反映されていない。
1974-85年における5時期の空中写真を用いてSfM-MVS解析を行い、有珠火山全体を対象として地表変位の空間分布計測を行った。SfM-MVS解析にはMetashape 2.0を使用した。5時期すべての写真をまとめてアラインメントし、地上基準点・検証点を取得することで、撮影時期の違いによる誤差を小さくした。地上基準点は17点、検証点は7点取得し、これらは大きな変位のあった有珠火山山頂・北麓周辺には取得しないように注意した。各時期に分けてポイントクラウド・数値表層モデル(DSM)・オルソモザイクを作成した。地理院地図の最新空中写真によるオルソ画像での位置を真値として、検証点の位置精度を求めた。各時期における残差のRMSEの最大値・最小値は、Xが0.48-1.15m、Yが0.47-0.96m、Zが0.81-2.28mであった。各時期のDSM差分図を作成し、地表の垂直変位量を求めた。また、DSM・オルソモザイクから地形判読を行い、①1974-85年(全期間)、②1974-77年(前期)、③1977-79年(中期)、④1979-85年(後期)における地表の水平変位量・方位の空間分布を求めた。
地表の水平変位に着目すると、前期(②)の期間では北東-東麓の変位が広範に認められるが、中-後期(③・④)の期間では東丸山断層の形成とともに東麓の変位量が小さくなり、北東麓の変位量が卓越した。断層変位はKadomura et al.(1983)の示す領域で最もシャープに認められ、その延長である南西端は山頂部の大有珠まで、北東端は湖岸まで連続的に認められた。変位量の空間分布から、山頂部に生じた北東に開口したU字型ブロックは、幅約1 kmを保って北東麓斜面に延び、その末端は湖岸・湖面下まで達したと考えられる。これらは先行研究での現地調査・観測による知見と調和的であり、本手法は干渉SAR解析や航空レーザ測量の普及以前(約1940-90年代)における地表変位の空間分布の調査・分析に有用と考えられる。
引用文献
今川俊明(1984):1977~1982年火山活動に伴う有珠山北外輪山斜面における地殻変動とマスムーブメント.地理学評論, 57(ser. A), 156-172.
Kadomura, H., Okada, H., Imagawa, T., Moriya, I., Yamamoto, H.(1983):Erosion and mass movements on Mt. Usu accelerated by crustal deformation that accompanied its 1977-1982 volcanism. J. Nat. Disaster Sci., 5, 33-62
Katsui, Y., Komuro, H., Uda, T.(1985):Development of faults and Growth of Usu-Shinzan cryptodome in 1977-1982 at Usu volcano, north Japan. Jour. Fac. Sci., Hokkaido Univ., Ser. IV, 21, 339-362.
守屋以智雄・岡田 弘・山本 博・今川俊明(1982):地殻変動に伴う地形変化と土砂流出. 門村 浩編:『有珠山における泥流災害とその対策に関する研究』文部省科学研究費自然災害特別研究研究成果, No. A-57-7, 57-73.
Okada, H., Watanabe, H., Yamashita, H., Yokoyama, I.(1981):Seismological significance of the 1977-1978 eruptions and the magma intrusion process of Usu volcano, Hokkaido. J. volcano. Geotherm. Res., 9, 311-334.
山岸宏光・守屋以智雄・松井公平(1982):有珠山の地形変動と侵食・土砂移動. 地球科学, 36, 307-320.
Yokoyama, I., Yamashita, H., Watanabe, H., Okada, H.(1981):Geophysical Characteristics of dacite volcanism – The 1977-1978 eruption of Usu volcano. J. volcano. Geotherm. Res., 9, 335-358.
1974-85年における5時期の空中写真を用いてSfM-MVS解析を行い、有珠火山全体を対象として地表変位の空間分布計測を行った。SfM-MVS解析にはMetashape 2.0を使用した。5時期すべての写真をまとめてアラインメントし、地上基準点・検証点を取得することで、撮影時期の違いによる誤差を小さくした。地上基準点は17点、検証点は7点取得し、これらは大きな変位のあった有珠火山山頂・北麓周辺には取得しないように注意した。各時期に分けてポイントクラウド・数値表層モデル(DSM)・オルソモザイクを作成した。地理院地図の最新空中写真によるオルソ画像での位置を真値として、検証点の位置精度を求めた。各時期における残差のRMSEの最大値・最小値は、Xが0.48-1.15m、Yが0.47-0.96m、Zが0.81-2.28mであった。各時期のDSM差分図を作成し、地表の垂直変位量を求めた。また、DSM・オルソモザイクから地形判読を行い、①1974-85年(全期間)、②1974-77年(前期)、③1977-79年(中期)、④1979-85年(後期)における地表の水平変位量・方位の空間分布を求めた。
地表の水平変位に着目すると、前期(②)の期間では北東-東麓の変位が広範に認められるが、中-後期(③・④)の期間では東丸山断層の形成とともに東麓の変位量が小さくなり、北東麓の変位量が卓越した。断層変位はKadomura et al.(1983)の示す領域で最もシャープに認められ、その延長である南西端は山頂部の大有珠まで、北東端は湖岸まで連続的に認められた。変位量の空間分布から、山頂部に生じた北東に開口したU字型ブロックは、幅約1 kmを保って北東麓斜面に延び、その末端は湖岸・湖面下まで達したと考えられる。これらは先行研究での現地調査・観測による知見と調和的であり、本手法は干渉SAR解析や航空レーザ測量の普及以前(約1940-90年代)における地表変位の空間分布の調査・分析に有用と考えられる。
引用文献
今川俊明(1984):1977~1982年火山活動に伴う有珠山北外輪山斜面における地殻変動とマスムーブメント.地理学評論, 57(ser. A), 156-172.
Kadomura, H., Okada, H., Imagawa, T., Moriya, I., Yamamoto, H.(1983):Erosion and mass movements on Mt. Usu accelerated by crustal deformation that accompanied its 1977-1982 volcanism. J. Nat. Disaster Sci., 5, 33-62
Katsui, Y., Komuro, H., Uda, T.(1985):Development of faults and Growth of Usu-Shinzan cryptodome in 1977-1982 at Usu volcano, north Japan. Jour. Fac. Sci., Hokkaido Univ., Ser. IV, 21, 339-362.
守屋以智雄・岡田 弘・山本 博・今川俊明(1982):地殻変動に伴う地形変化と土砂流出. 門村 浩編:『有珠山における泥流災害とその対策に関する研究』文部省科学研究費自然災害特別研究研究成果, No. A-57-7, 57-73.
Okada, H., Watanabe, H., Yamashita, H., Yokoyama, I.(1981):Seismological significance of the 1977-1978 eruptions and the magma intrusion process of Usu volcano, Hokkaido. J. volcano. Geotherm. Res., 9, 311-334.
山岸宏光・守屋以智雄・松井公平(1982):有珠山の地形変動と侵食・土砂移動. 地球科学, 36, 307-320.
Yokoyama, I., Yamashita, H., Watanabe, H., Okada, H.(1981):Geophysical Characteristics of dacite volcanism – The 1977-1978 eruption of Usu volcano. J. volcano. Geotherm. Res., 9, 335-358.