17:15 〜 18:45
[SVC26-P04] 磁鉄鉱解析からみた有珠火山1977-1978年噴火におけるマグマ活動の推移
キーワード:有珠火山、1977-1978年噴火、デイサイトマグマ、噴火推移、磁鉄鉱、累帯構造
火山の噴火では,その開始から終息までに噴火様式がしばしば変化し,それに伴って備えるべきハザードも変わっていく.従って,噴火推移のメカニズムを知り,的確に予測することが求められる.噴火を駆動するのは地下のマグマであるので,マグマがどの深さでどのような状態にあるのかが重要となる.本研究では,有珠火山1977-1978年噴火を例として,主に磁鉄鉱を対象とした岩石学的解析によってこの問題を考える.
有珠火山の1977-1978年噴火は,その推移が詳細に観察され,また地球物理学的観測や地質・岩石学的データも豊富である (e.g., Katsui et al., 1978; Niida et al., 1980; Yokoyama et al., 1981; Oba et al., 1983; 吉田, 1995).はじめに発泡のよい軽石を放出する準プリニー式噴火が発生し (Us-1977-I, II, III & IV),発泡の悪い岩片を放出する爆発 (Us-1977-SBなど) を経て,一旦噴火は停止した(第1期噴火).しかしその後に潜在ドーム (有珠新山) の成長が始まり,やがて水蒸気噴火からマグマ水蒸気噴火・マグマ噴火 (Us-1978) を繰り返す次の噴火活動が発生した(第2期噴火).本研究では,元素拡散が速くて数日〜数週間程度のマグマプロセスをよく記録する磁鉄鉱に着目して,その組成累帯構造を岩石学的に解析することにより,それぞれの噴火の直前のマグマ過程がどのようなものであったのかを推定することを試みた.
1977年の準プリニー式噴火については,去年のJpGU (東宮, 2023) において予察的な報告をしており,噴火直前にマグマ溜まりで高温マグマの注入による加熱を受け,急速に上昇・噴火したことが示されている.今回の解析により,Us-1977-SB や Us-1978 では冷却過程が顕著にみられることが明らかになった.特に Us-1978 については石基にシリカ鉱物が顕著に現れており,低温・低圧でしばらく滞留していたことが示された.従って,1978年噴火を引き起こしたマグマは,マグマ溜まりから直接来たものではなく,1977年に上昇したのち浅所に貫入していたマグマがもたらしたものであると考えられる.これは,1978年噴火時に深さ1-2kmほどに地震の空白域および低速度異常が見られていたことと整合的である.
このように,マグマの加熱・冷却あるいは蓄積深度は噴火様式に影響を与えうることから,こうしたマグマの状態をたとえば火山灰の迅速分析などによって噴火中に随時把握することができれば,噴火推移の的確な予測につながるものと期待できる.
有珠火山の1977-1978年噴火は,その推移が詳細に観察され,また地球物理学的観測や地質・岩石学的データも豊富である (e.g., Katsui et al., 1978; Niida et al., 1980; Yokoyama et al., 1981; Oba et al., 1983; 吉田, 1995).はじめに発泡のよい軽石を放出する準プリニー式噴火が発生し (Us-1977-I, II, III & IV),発泡の悪い岩片を放出する爆発 (Us-1977-SBなど) を経て,一旦噴火は停止した(第1期噴火).しかしその後に潜在ドーム (有珠新山) の成長が始まり,やがて水蒸気噴火からマグマ水蒸気噴火・マグマ噴火 (Us-1978) を繰り返す次の噴火活動が発生した(第2期噴火).本研究では,元素拡散が速くて数日〜数週間程度のマグマプロセスをよく記録する磁鉄鉱に着目して,その組成累帯構造を岩石学的に解析することにより,それぞれの噴火の直前のマグマ過程がどのようなものであったのかを推定することを試みた.
1977年の準プリニー式噴火については,去年のJpGU (東宮, 2023) において予察的な報告をしており,噴火直前にマグマ溜まりで高温マグマの注入による加熱を受け,急速に上昇・噴火したことが示されている.今回の解析により,Us-1977-SB や Us-1978 では冷却過程が顕著にみられることが明らかになった.特に Us-1978 については石基にシリカ鉱物が顕著に現れており,低温・低圧でしばらく滞留していたことが示された.従って,1978年噴火を引き起こしたマグマは,マグマ溜まりから直接来たものではなく,1977年に上昇したのち浅所に貫入していたマグマがもたらしたものであると考えられる.これは,1978年噴火時に深さ1-2kmほどに地震の空白域および低速度異常が見られていたことと整合的である.
このように,マグマの加熱・冷却あるいは蓄積深度は噴火様式に影響を与えうることから,こうしたマグマの状態をたとえば火山灰の迅速分析などによって噴火中に随時把握することができれば,噴火推移の的確な予測につながるものと期待できる.