17:15 〜 18:45
[SVC26-P19] 長周期-超長周期帯域から見た桜島火山の爆発地震の発生機構
キーワード:爆発地震、発生機構、波形インバージョン、桜島火山
1. はじめに
爆発的な噴火に伴い発生する爆発地震は、岩塊や火山灰などの火砕物の放出および火山ガス放出等に関連する力学的現象を反映している。爆発地震は世界各地の火山で観測され、その力学過程は超長周期帯域のソースメカニズム解析によって明らかにされている。これまでの解析により、マグマの発泡現象に伴う体積変化(e.g. Lyons and Waite, 2011; Kim et al., 2014)、岩塊の放出に伴う反力やマグマの上昇に伴う抗力(Ohminato et al., 2006)が明らかにされている。桜島においても、これまでに爆発地震の解析が進められている。桜島では、他の火山と比較して深い位置に震源位置が推定されている(Uhira and Takeo, 1994; Tameguri et al., 2002)。一方、近年の研究では爆発地震の初動解析で噴火口から数百メートルのより浅い位置に震源位置が推定されている(Nishimura et al., submitted)。本研究では、長周期から超長周期帯域における爆発地震の解析から震源時間関数を推定し、空振記録と比較して噴火に伴う火砕物放出等の表面現象との対応関係を調べ、噴火機構を明らかにする。
2. 解析データについて
桜島島内には山頂を取り囲むように、山頂から2kmから8kmの範囲にある5つの観測点に広帯域地震計が設置されており、連続観測が実施されている。2022年4月29日から2023年9月26日までの期間に、山頂からの方角において広帯域地震計がない領域に広帯域地震計を1台設置し、臨時観測を実施した。臨時観測期間中に発生した爆発・噴火イベント数は、鹿児島地方気象台によって発表されている爆発・噴火リストによると359回となっている。このイベントのうち、超長周期帯域のうち脈動ノイズが強い0.1-0.5Hzの帯域において、S/N比が10以上となった成分が全観測点・成分で確認されたイベントは2022年7月17日18時52分と、2022年7月24日20時5分の爆発地震であった。本研究では、2つの爆発地震の観測データについて解析を実施した。
3. 爆発地震の解析方法
2つの爆発地震において、超長周期帯域(0.01-0.5 Hz)と長周期帯域(0.5-5 Hz)(Chouet and Matoza, 2013)の振幅スペクトルはノイズスペクトルよりも十分に振幅が大きい。観測波形に因果律を満たす0.067-1Hzのバンドパスフィルターを適用した。そして、長周期帯域を含む超長周期帯域の波形に対して周波数領域の波形インバージョン解析(Auger et al., 2006)を実施した。震源位置は、グリッドサーチにて求めた。サーチ範囲は、水平方向に爆発地震の震源位置の分布(Nishimura et al., submitted)から噴火口を囲むように東西、南北に2000 m、深さ方向は地表付近から海抜下2400 mとした。ソースメカニズムとしてモーメントテンソル6成分+シングルフォース3成分、モーメントテンソル6成分、シングルフォース3成分の3つを仮定した。
4. 解析結果及び議論
解析した結果、2つの爆発地震についていずれも残差値およびAICの値からモーメントテンソル6成分+シングルフォース3成分のソースモデルが最適であることが分かった。得られた震源時間関数の振幅比から、7月17日は1つのシル状クラック、7月24日はシル状クラックとダイク状クラックで近似できる。震源位置は、7月17日は噴火口から北西に約800 m離れた場所の海抜下480 mに求められたのに対し、7月24日は噴火口付近の海抜440 mに求められた。シル状クラックはいずれのイベントもマグマの一時的なバッファーの機能を果たしていて、ダイク状クラックは火道の役割を果たしているものと考えられる。シングルフォースは、7月17日のイベントにおいてはマグマやガスの上昇に伴って発生する震源と周囲の媒質の相互作用によって生じるものと考えられる。7月24日のイベントは、空振発生後の溶岩プラグの破壊による反作用と火砕物放出に関連するマグマの上昇による抗力、そしてガスの上昇に伴うとして作用したものと考えられる。
謝辞:国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所の観測坑道内の広帯域地震計記録と、気象庁の広帯域地震計記録を利用した。本研究は東京大学地震研究所共同利用(2022-M-15)と科研費(学術変革領域研究(A)公募研究 課題番号22H05304)の援助をうけた。記して感謝する。
爆発的な噴火に伴い発生する爆発地震は、岩塊や火山灰などの火砕物の放出および火山ガス放出等に関連する力学的現象を反映している。爆発地震は世界各地の火山で観測され、その力学過程は超長周期帯域のソースメカニズム解析によって明らかにされている。これまでの解析により、マグマの発泡現象に伴う体積変化(e.g. Lyons and Waite, 2011; Kim et al., 2014)、岩塊の放出に伴う反力やマグマの上昇に伴う抗力(Ohminato et al., 2006)が明らかにされている。桜島においても、これまでに爆発地震の解析が進められている。桜島では、他の火山と比較して深い位置に震源位置が推定されている(Uhira and Takeo, 1994; Tameguri et al., 2002)。一方、近年の研究では爆発地震の初動解析で噴火口から数百メートルのより浅い位置に震源位置が推定されている(Nishimura et al., submitted)。本研究では、長周期から超長周期帯域における爆発地震の解析から震源時間関数を推定し、空振記録と比較して噴火に伴う火砕物放出等の表面現象との対応関係を調べ、噴火機構を明らかにする。
2. 解析データについて
桜島島内には山頂を取り囲むように、山頂から2kmから8kmの範囲にある5つの観測点に広帯域地震計が設置されており、連続観測が実施されている。2022年4月29日から2023年9月26日までの期間に、山頂からの方角において広帯域地震計がない領域に広帯域地震計を1台設置し、臨時観測を実施した。臨時観測期間中に発生した爆発・噴火イベント数は、鹿児島地方気象台によって発表されている爆発・噴火リストによると359回となっている。このイベントのうち、超長周期帯域のうち脈動ノイズが強い0.1-0.5Hzの帯域において、S/N比が10以上となった成分が全観測点・成分で確認されたイベントは2022年7月17日18時52分と、2022年7月24日20時5分の爆発地震であった。本研究では、2つの爆発地震の観測データについて解析を実施した。
3. 爆発地震の解析方法
2つの爆発地震において、超長周期帯域(0.01-0.5 Hz)と長周期帯域(0.5-5 Hz)(Chouet and Matoza, 2013)の振幅スペクトルはノイズスペクトルよりも十分に振幅が大きい。観測波形に因果律を満たす0.067-1Hzのバンドパスフィルターを適用した。そして、長周期帯域を含む超長周期帯域の波形に対して周波数領域の波形インバージョン解析(Auger et al., 2006)を実施した。震源位置は、グリッドサーチにて求めた。サーチ範囲は、水平方向に爆発地震の震源位置の分布(Nishimura et al., submitted)から噴火口を囲むように東西、南北に2000 m、深さ方向は地表付近から海抜下2400 mとした。ソースメカニズムとしてモーメントテンソル6成分+シングルフォース3成分、モーメントテンソル6成分、シングルフォース3成分の3つを仮定した。
4. 解析結果及び議論
解析した結果、2つの爆発地震についていずれも残差値およびAICの値からモーメントテンソル6成分+シングルフォース3成分のソースモデルが最適であることが分かった。得られた震源時間関数の振幅比から、7月17日は1つのシル状クラック、7月24日はシル状クラックとダイク状クラックで近似できる。震源位置は、7月17日は噴火口から北西に約800 m離れた場所の海抜下480 mに求められたのに対し、7月24日は噴火口付近の海抜440 mに求められた。シル状クラックはいずれのイベントもマグマの一時的なバッファーの機能を果たしていて、ダイク状クラックは火道の役割を果たしているものと考えられる。シングルフォースは、7月17日のイベントにおいてはマグマやガスの上昇に伴って発生する震源と周囲の媒質の相互作用によって生じるものと考えられる。7月24日のイベントは、空振発生後の溶岩プラグの破壊による反作用と火砕物放出に関連するマグマの上昇による抗力、そしてガスの上昇に伴うとして作用したものと考えられる。
謝辞:国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所の観測坑道内の広帯域地震計記録と、気象庁の広帯域地震計記録を利用した。本研究は東京大学地震研究所共同利用(2022-M-15)と科研費(学術変革領域研究(A)公募研究 課題番号22H05304)の援助をうけた。記して感謝する。