10:00 〜 10:15
[SVC28-05] Landsat-8の熱赤外画像を用いた阿蘇カルデラの地表温度異常の検出と地震および火山活動との比較

先行研究(Gunatilake, 2023)では,2016年4月の熊本地震により生じた亀裂に沿って,マグマ性流体が上昇した結果,阿蘇カルデラ周辺で地下温度及び間隙水圧が上昇し,新たな地熱資源として利用できる可能性を示している。この先行研究では実際の地下構造や地震活動を踏まえた数値シミュレーションがなされたものの,実際の温度の推定は行われていない。また,2次元断面の解析が行われていたため,温度の上昇域の特定が困難である。そこで本研究は,2016年熊本地震前後における地表面温度を推定し,先行研究の検証と地表温度異常域の特定を行った。また,同時期の震源分布や地表変位と比較することで,地震および火山活動との関連性も検証した。
まず,地表面温度の推定には光学衛星Landsat-8によって取得された熱赤外画像を用いた。Landsat-8にはTIRバンドと呼ばれる熱赤外画像を取得できるバンドが2つ存在し,この2バンドの画像を用いてスプリットウィンドウ法と呼ばれる方法で地表面温度の推定を行った。地表変位の推定にはSAR衛星ALOS-2によって取得されたSARデータを用いた。このSARデータから干渉SAR解析と呼ばれる方法を用いることで,地表変位を推定した。また,震源分布に関しては気象庁によって公開されている震源データを用いた。解析範囲は先行研究でも対象にされていた熊本県阿蘇カルデラ周辺とした。解析の際は気温による影響軽減のため,解析範囲内の平均地表面温度からの差を用いて比較を行った。
結果として得られた地表面温度画像には地震後に阿蘇カルデラの北西部に位置する布田川断層付近で広範囲の地表面温度の上昇が見られたが,一時的なものであり1ヶ月後には元の温度に戻っていた。先行研究によると地表面温度の上昇は継続的なものであるとなされていたため,本研究では解析範囲を布田川断層付近の一時的な地表面温度の上昇が見られた阿蘇カルデラ北西部の範囲に狭め,地震後の4ヶ月間にわたり周囲に比べ地表面温度が上昇し続けていた範囲を解析した。その結果,阿蘇カルデラ北西部に位置する内牧地域において地表面温度の増加が継続する部分があることを検出した。検出された内牧地域の付近では,2016年熊本地震による広範囲の水平すべりとそれに伴う亀裂の集中的な発生が確認されていた(Tsuji et al., 2017)。以上より,この地域において地表温度異常が発生したのは,熊本地震による水平すべりで生じた亀裂に沿ってマグマ性流体が上昇したためであると考察した。
また,阿蘇山中岳火口付近においても同様の方法を用いて地表温度異常を検出しようと試みた結果,地表面温度が上昇し続けていたのは火口内部のみであった。これは2016年10月8日に発生した阿蘇山中岳第1火口の爆発的噴火という結果からも推定できる通り,阿蘇山の火山活動が活発になったことで現れた地表温度異常であると考察した。一方,地表変位の結果を考えると,阿蘇山噴火後約1か月間は大きな変位は無く,その後の約4か月間で沈下,そしてその後に隆起したという結果になった。これより,阿蘇山付近においては噴火後1か月後に火山ガス等の火山内の物質減少による沈下が起き,それらが再び蓄積されることで以降の地表面隆起が発生したと考察した。また,噴火後である2017年の震源分布を考えると,噴火前には見られなかった阿蘇山地下深部を震源とする地震が多数発生していた。
まず,地表面温度の推定には光学衛星Landsat-8によって取得された熱赤外画像を用いた。Landsat-8にはTIRバンドと呼ばれる熱赤外画像を取得できるバンドが2つ存在し,この2バンドの画像を用いてスプリットウィンドウ法と呼ばれる方法で地表面温度の推定を行った。地表変位の推定にはSAR衛星ALOS-2によって取得されたSARデータを用いた。このSARデータから干渉SAR解析と呼ばれる方法を用いることで,地表変位を推定した。また,震源分布に関しては気象庁によって公開されている震源データを用いた。解析範囲は先行研究でも対象にされていた熊本県阿蘇カルデラ周辺とした。解析の際は気温による影響軽減のため,解析範囲内の平均地表面温度からの差を用いて比較を行った。
結果として得られた地表面温度画像には地震後に阿蘇カルデラの北西部に位置する布田川断層付近で広範囲の地表面温度の上昇が見られたが,一時的なものであり1ヶ月後には元の温度に戻っていた。先行研究によると地表面温度の上昇は継続的なものであるとなされていたため,本研究では解析範囲を布田川断層付近の一時的な地表面温度の上昇が見られた阿蘇カルデラ北西部の範囲に狭め,地震後の4ヶ月間にわたり周囲に比べ地表面温度が上昇し続けていた範囲を解析した。その結果,阿蘇カルデラ北西部に位置する内牧地域において地表面温度の増加が継続する部分があることを検出した。検出された内牧地域の付近では,2016年熊本地震による広範囲の水平すべりとそれに伴う亀裂の集中的な発生が確認されていた(Tsuji et al., 2017)。以上より,この地域において地表温度異常が発生したのは,熊本地震による水平すべりで生じた亀裂に沿ってマグマ性流体が上昇したためであると考察した。
また,阿蘇山中岳火口付近においても同様の方法を用いて地表温度異常を検出しようと試みた結果,地表面温度が上昇し続けていたのは火口内部のみであった。これは2016年10月8日に発生した阿蘇山中岳第1火口の爆発的噴火という結果からも推定できる通り,阿蘇山の火山活動が活発になったことで現れた地表温度異常であると考察した。一方,地表変位の結果を考えると,阿蘇山噴火後約1か月間は大きな変位は無く,その後の約4か月間で沈下,そしてその後に隆起したという結果になった。これより,阿蘇山付近においては噴火後1か月後に火山ガス等の火山内の物質減少による沈下が起き,それらが再び蓄積されることで以降の地表面隆起が発生したと考察した。また,噴火後である2017年の震源分布を考えると,噴火前には見られなかった阿蘇山地下深部を震源とする地震が多数発生していた。