日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC29] 火山の監視と活動評価

2024年5月31日(金) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:高木 朗充(気象庁気象研究所)、宗包 浩志(国土地理院)、大湊 隆雄(東京大学地震研究所)

17:15 〜 18:45

[SVC29-P08] 稠密地震観測データを用いた二重スペクトル比法による八丈島の地震波減衰構造

*久保田 藍午1東 宏幸1小田 義也1渡辺 俊樹2、山田 雅行3 (1.東京都立大学、2.名古屋大学、3.株式会社ニュージェック)

キーワード:二重スペクトル比法、減衰構造

1. はじめに
現在日本には111の活火山が存在しており,世界有数の火山大国である.八丈島は東京の南287kmに位置し,東山と西山の2つの成層火山が接合して形成された島であり,気象庁が定める常時観測火山の1つである.火山災害の防災・減災のためには,観測・監視により噴火の兆候となる火山現象を捉えることに加え,観測データを正しく解釈するために正確な地下構造を解明することが必要不可欠である. このような背景から, 東京都立大学では2019年度と2021年度に八丈島において臨時稠密地震観測を実施し,地下構造の推定に取り組んでいる.その一環として2019年度の観測データに二重スペクトル比法を適用した地震波減衰特性の推定を行ったが,データ数が少なく安定した結果が得られなかった.そこで本研究では,2021年度の観測データを加えて,八丈島の地震波減衰構造を推定した.
2. 稠密地震観測データ
観測は八丈島の西山周辺に35点,東山周辺に10点,八丈小島に1点の計46地点で2019年9月から2020年3月までの約7ヶ月間と2021年9月から2022年3月までの約7ヶ月間,1Hz速度計によりサンプリング周波数250Hzで3成分の連続観測を行った.観測データに対して,気象庁地震月報の震源情報を基にWINシステム(卜部・束田,1992)を用いてP波初動の手動検測を行った.
3. 解析手法
解析には二重スペクトル比法を用いた.解析手順としては,まず地震波形から切り出したP波初動の0.2秒前から0.7秒間のデータに対して二重スペクトル比法を適用し,各観測点間の平均二重スペクトル比を求めた.次に,逆解析により平均二重スペクトル比からQp構造を推定した.二重スペクトル比法とは,複数の観測点で観測された複数の地震記録を用いることで震源特性とサイト増幅特性を除去し,震源から観測点近傍までの伝播経路特性,すなわち地震波減衰特性を推定する手法である.逆解析では,平均二重スペクトル比を用いてBPTにより初期モデルを作成し,SIRTにより理論二重スペクトル比と観測二重スペクトル比の誤差を最小とするようにモデルを反復修正することで,Qp構造を推定した.また,観測地震波が通過した深さを確かめるため,波線追跡を行い地震波の伝播深度の確認を行った.
4. 解析結果
安定した二重スペクトル比を得るため,片側3つ以上ずつ地震があるペアに対してのみ平均二重スペクトル比を計算した.計算によって得られた平均二重スペクトル比を用いて逆解析を行うことによってQp構造を推定した.推定したQp構造から領域ごとの減衰の度合いを評価することができた.
5. 考察
本研究で得られたQp構造について,2019年度の観測データから八丈島の減衰特性を推定した渡邊(2021)の結果,木股ほか(2004)によって推定された2002年のダイク貫入位置,そして,萩原・渡辺(2019)によって推定された八丈島の速度構造との関係について考察を行った.
6. まとめ
本研究では,八丈島の稠密地震観測データに二重スペクトル比法を適用し,その結果を用いて,逆解析により八丈島のQp構造を推定した.また,得られた八丈島のQp構造に対して八丈島の火山活動や速度構造との関係について考察した.

参考文献
萩原弘子・渡辺秀文(2019) : 三宅島・神津島・八丈島周辺の震源分布の特徴:速度 構造との関連性,日本地球惑星科学連合 2019 年大会,23.
木股文昭,メイラノ イルワン,深野慶太(2004) : GPSにより観測された八丈島における地殻変動とそのダイク貫入モデルの推定,火山,49,13-22.
卜部卓,束田進也(1992) : win–微小地震観測網波形験測支援のためのワークステーション・プログラム(強化版),地震学会講演予稿集,2,41.
渡邊 詩子(2021) : 稠密地震観測データを用いた二重スペクトル比法による八丈島の減衰特性,物理探査学会学術講演会講演論文集,144,83-86.