17:15 〜 18:45
[U15-P06] 3次元地震波速度構造モデルを用いた令和6年能登半島地震(Mw7.5)の余震のセントロイド・モーメントテンソル解析
キーワード:セントロイド・モーメントテンソル、逆断層地震、横ずれ断層地震、正断層地震
2024年1月1日 16時10分頃、能登半島地方を震源とするMw7.5の地震が発生した。本震の震源域は能登半島北西部から佐渡沖にかけて広がっており、広範囲で活発な余震活動が観測された。余震の発生位置や発震機構解の正確な推定は、本震の断層形状の推定や地震発生場所の応力状態の評価などに必要である。しかし、海陸境界部等の地震波速度構造が複雑な地域で発生した地震については、震源位置や発震機構解の推定に1次元地震波速度構造モデルを使用した場合、得られた位置や発震機構解に有意な推定誤差が生じる可能性がある。そこで本研究では、3次元地震波速度構造モデルを使用したセントロイド・モーメントテンソル(CMT)解析を行うことで、海陸境界部で発生した能登半島地震の余震の発生位置や発震機構解の統一的かつより正確な推定を目指す。
本研究では、2024年1月1日から2月4日までに能登半島地方及び佐渡沖で発生した気象庁マグニチュード3.2から6.1までの955個の地震を対象とした。これらの地震に対するCMT解析には、F-net広帯域地震計から得られた3成分(東西・南北・鉛直成分)速度波形に、周期20–50秒のバンドパスフィルタを適用し使用した。気象庁マグニチュード5.0以上の地震に対しては震央距離が50–400 km、5.0未満の地震に対しては50–300 kmの観測点を選択した。グリーン関数の計算には、3次元地震波速度構造モデルを仮定した、差分法による地震波伝播シミュレーション(Maeda et al., 2017)を用いた。仮定した3次元地震波速度構造モデルは、堆積平野などがモデル化されている全国1次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)を初期モデルとし、その最小S波速度を1.0 km/s とした上で、地形や海水層を考慮して作成した。セントロイド位置及び時刻の推定には、各グリッドにおいて最小二乗法により求めたモーメントテンソル解に基づく理論波形と観測波形の残差が最小となるよう、グリッドサーチを行った(Yamaya et al., 2022)。
CMT解析の結果、Variance reductionが30%以上となったCMT解が180個得られた。Variance reductionが30%以下のCMT解が得られた原因の多くは、本震発生直後の活発な地震活動によるSignal-to-noise ratioの低下であった。得られたCMT解カタログから、余震域全体として、地震の多くは深さ5–15 kmの深さで発生しており、北西–南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型の地震が多いことがわかった。また、CMT解の空間分布から、能登半島下では南東傾斜、佐渡沖では北西傾斜の傾向が見られた。この結果は、日本海地震・津波調査プロジェクトの想定地震断層モデルにおいて、北西傾斜・南東傾斜が入れ替わる範囲と調和的である。さらに、得られたCMT解のカタログデータにグラフベースの非線形次元圧縮手法UMAPを適用して次元圧縮を行い(Kubo et al., 2023)、さらに次元圧縮後のデータに階層的集約クラスタリングを適用することで、CMT解の空間分布の特徴を調べた。余震域の南西部にあたる志賀町北部では、東西方向に圧縮軸を持つ逆断層型の地震が卓越しており、他の領域より浅部にあたる深さ5 km以浅にセントロイド位置が推定された。能登半島下では、逆断層型に加えて横ずれ断層型の地震活動も確認された。これは、能登半島周辺の応力場が横ずれ断層型と逆断層型の遷移領域となっていること(Terakawa & Matsu’ura, 2010)と調和的である。さらに、能登半島の北東に位置する珠洲市の北東沖には、局所的に、Mw3.5程度で正断層を示すCMT解が深さ約5 kmに複数推定された。これらの地震は、F-net MT解やHi-net初動解でも正断層を示していた。この正断層の推定領域は、北西傾斜・南東傾斜が入れ替わる場所に近接しており、震源断層の傾斜の入れ替わりに伴って生じた応力の不均質により、正断層型の地震が誘発された可能性を示していると考えられる。
本研究は、防災科学技術研究所のF-netデータを使用した(https://doi.org/10.17598/NIED.0005)。
本研究では、2024年1月1日から2月4日までに能登半島地方及び佐渡沖で発生した気象庁マグニチュード3.2から6.1までの955個の地震を対象とした。これらの地震に対するCMT解析には、F-net広帯域地震計から得られた3成分(東西・南北・鉛直成分)速度波形に、周期20–50秒のバンドパスフィルタを適用し使用した。気象庁マグニチュード5.0以上の地震に対しては震央距離が50–400 km、5.0未満の地震に対しては50–300 kmの観測点を選択した。グリーン関数の計算には、3次元地震波速度構造モデルを仮定した、差分法による地震波伝播シミュレーション(Maeda et al., 2017)を用いた。仮定した3次元地震波速度構造モデルは、堆積平野などがモデル化されている全国1次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)を初期モデルとし、その最小S波速度を1.0 km/s とした上で、地形や海水層を考慮して作成した。セントロイド位置及び時刻の推定には、各グリッドにおいて最小二乗法により求めたモーメントテンソル解に基づく理論波形と観測波形の残差が最小となるよう、グリッドサーチを行った(Yamaya et al., 2022)。
CMT解析の結果、Variance reductionが30%以上となったCMT解が180個得られた。Variance reductionが30%以下のCMT解が得られた原因の多くは、本震発生直後の活発な地震活動によるSignal-to-noise ratioの低下であった。得られたCMT解カタログから、余震域全体として、地震の多くは深さ5–15 kmの深さで発生しており、北西–南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型の地震が多いことがわかった。また、CMT解の空間分布から、能登半島下では南東傾斜、佐渡沖では北西傾斜の傾向が見られた。この結果は、日本海地震・津波調査プロジェクトの想定地震断層モデルにおいて、北西傾斜・南東傾斜が入れ替わる範囲と調和的である。さらに、得られたCMT解のカタログデータにグラフベースの非線形次元圧縮手法UMAPを適用して次元圧縮を行い(Kubo et al., 2023)、さらに次元圧縮後のデータに階層的集約クラスタリングを適用することで、CMT解の空間分布の特徴を調べた。余震域の南西部にあたる志賀町北部では、東西方向に圧縮軸を持つ逆断層型の地震が卓越しており、他の領域より浅部にあたる深さ5 km以浅にセントロイド位置が推定された。能登半島下では、逆断層型に加えて横ずれ断層型の地震活動も確認された。これは、能登半島周辺の応力場が横ずれ断層型と逆断層型の遷移領域となっていること(Terakawa & Matsu’ura, 2010)と調和的である。さらに、能登半島の北東に位置する珠洲市の北東沖には、局所的に、Mw3.5程度で正断層を示すCMT解が深さ約5 kmに複数推定された。これらの地震は、F-net MT解やHi-net初動解でも正断層を示していた。この正断層の推定領域は、北西傾斜・南東傾斜が入れ替わる場所に近接しており、震源断層の傾斜の入れ替わりに伴って生じた応力の不均質により、正断層型の地震が誘発された可能性を示していると考えられる。
本研究は、防災科学技術研究所のF-netデータを使用した(https://doi.org/10.17598/NIED.0005)。