公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

一般口演

現地発表

一般口演11
症例

2024年7月7日(日) 14:10 〜 14:40 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:岡本 和彦(明海大)

[O2-9] フルアーチ連結型人工歯を用いた3Dプリント総義歯の6か月間の経過報告

*玉置 勝司1、生田 龍平2、渡辺 宣孝3、前畑 香4、須藤 真行5、片岡 加奈子6 (1. 神奈川歯科大学、2. (株)フェリーチェ、3. 鎌倉大町歯科、4. ナカエ歯科クリニック、5. みどりの森デンタルクリニック、6. 新城パーク歯科クリニック)

[Abstract]
【緒言】
 3Dプリント技術は歯科領域において期待され、特に広範囲の義歯装置の製作ではその臨床応用の可能性は高い.新規開発した3Dプリント義歯床用材料(S-WAVE プリント デンチャーベース,松風,京都)を用い,専用の3Dプリンター装置(S-WAVE 3Dプリンター IMD-S,松風,京都)でソケット型義歯床を造形し,総義歯の平均的人工歯列弓1)をもとに製作されたフルアーチ連結型人工歯(ベラシアSA フルアーチ,松風)を使用した.今回は無歯顎患者の口腔内に3Dプリント義歯を装着し,6か月間の機能と咬合状態を評価したので報告する.
【症例の概要・治療内容】
 症例:80歳,女性,無歯顎.使用中の総義歯は4カ月前に装着したものを複数回調整し,使用中であった.無歯顎の難易度判定はⅠ(84)であった.今回、新たに3Dプリント義歯の装着,使用と発表の同意を得て行った.3Dプリント総義歯の製作:咬合器付着した上下顎無歯顎模型の3Dスキャン(E3, 3shape社,デンマーク)後,義歯床の設計(Dental Designer Full Dentures,3shape,デンマーク)を行った.人工歯埋め込み用ソケット付き総義歯床の3Dプリント(S-WAVE 3Dプリンター IMD-S,松風)後,フルアーチ連結型人工歯(ベラシアSAフルアーチ連結型人工歯,松風)を接着し,最終硬化処理を行い完成した(図1).装着後の検査:装着後,6か月までの咀嚼能力,咬合力,咬合接触の検査を行った.
【経過ならびに考察】
 装着時、義歯床の調整は無く,また咬頭嵌合位で臼歯部の左右均等な咬合接触,および側方運動時に両側性平衡咬合が得られていた.装着時,2か月後,3か月後,6か月後の結果を示す.装着時の調整時間がなかった.また,6か月間義歯床内面の一か所の調整のみで,患者,術者の負担が極めて少なく,機能が維持されていた.患者の感想:義歯装着後の歯肉の痛みもなく,最初から使用中の義歯以上によく噛むことができた.見た目きれいなので,非常に満足している.今後,さらに症例数を増やし,3Dプリント義歯の臨床応用を目指したい.
【参考文献】
1) 前畑 香,小松俊司,渡辺宣孝ほか.総義歯製作における人工歯排列の水平面的アーチの決定に関する研究.日補綴会誌 2022;14:150-157.