公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

症例

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-150] ブラキシズムが疑われる上顎前歯部審美不良患者にラミネートべニア修復を行った症例

*田中 隆太1、小林 健一郎1、櫻井 薫1、井上 高暢1 (1. 東京支部)

[Abstract]
【緒言】
 患者は55歳女性.上顎前歯部の隙間が気になることを主訴に来院した.上顎前歯部に歯間離開が存在し,縞模様の歯質変色,また左側上顎側切歯冠不適合による審美不良が認められた.下顎に骨隆起を認めたことからブラキシズムが疑われた.患者はできる限り天然歯を削りたくないという希望があった.そこで患者の下顎運動を考慮したラミネートべニア修復で審美改善を,また腹式呼吸でブラキシズムの軽減を図ることとした.発表に際し患者の同意を得た.
【症例の概要・治療内容】
 ブラックスチェッカー(JM Ortho)により夜間のブラキシズムの程度を確認し,また偏心運動時の前歯の干渉を防止するために,下顎運動測定器(デジタルJAWシステム.Zebris)を用いて下顎の動きを測定した.また前方チェックバイトを採得し咬合器を調節した.装着後にブラックスチェッカーを用いブラキシズムでの咬合接触状態の確認を行った.またスタビライゼーション型スプリントを使用し,残存歯質と補綴装置の保護を図った.さらにブラキシズム軽減のために腹
式呼吸も指導した.
【経過ならびに考察】
 リコール時には脱離や破損もなく,患者の満足度も良好で,審美的な不快感や舌圧痕 1) は解消されていた.適切な偏心運動時の咬合関係の保持と装着後のスタビライゼーション型スプリントの使用が上顎前歯部ラミネートべニアの安定に寄与したと考えられる.ブラキシズムを行う患者の上顎前歯部ポーセレンジャケット冠とラミネートべニアによる修復において,患者固有の下顎運動を考慮した咬合器の調節,装着後のブラックスチェッカーを用いた咬合調整,また就寝時にスタビライゼーション型スプリントを用い,腹式呼吸を指導 2) することが補綴装置の保護に有効であったと思われる.
今後も定期的に来院を促し長期の観察を行っていきたい.
【参考文献】
1) Takagi I, Sakurai K. Investigation of the factors related to the formation
of the buccal mucosa ridging. J Oral Rehabil. 2003 ;.65-72,.
2) Ando T, Sakurai K. Effect of Abdominal Breathing on the Occurrence of Non-Sleep Bruxism. Prosthodont Res Pract. 2006 ; 5 : 189-94.