[課題4] 高齢者の口腔・認知の両機能を向上させる訓練方法:二重盲検RCTによる効果検証
[Abstract]
【目的】
口腔機能低下症やオーラルフレイルが社会問題化する中で,口腔機能低下と認知機能低下との関連も示唆されている.一方,口腔機能低下予防のために様々な口腔機能訓練法が用いられているが,それらの効果を適切に検証した研究は少なく,さらに口腔機能訓練が認知機能におよぼす影響については不明な点が多い.本研究は,さまざまな口腔機能訓練にゲームベース,いわゆる「脳トレ」の要素を含んだ認知訓練を組み合わせ,口腔機能とともに認知機能の改善をも目指す認知・口腔機能訓練プログラムを試作し,その効果について一般高齢者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験により検証した.
【方法】
認知・口腔機能訓練は,認知訓練要素と口腔機能訓練要素を組み合わせ,パタカラ発音×計算,口唇運動×Nバック,舌運動×抑制,舌運動×記憶の4種類を構築し,それぞれ7段階(認知負荷無し~認知負荷最大まで)の難易度を設定したプログラムを試作,タブレットに搭載して行わせた.60-80歳の健常高齢者58名を,A群:認知・口腔機能訓練を行う群,B群:口腔機能訓練のみ行う群,C群:コントロール群の3群にランダムに割り当てた.訓練は1日16分,介入期間は6週間とし,介入前後において各種認知機能・口腔機能検査,および口腔機能訓練中の脳活動測定を行った.脳活動測定には近赤外分光法を用い,左側背外側前頭前野と右側内側前頭前野の脳活動を計測した.介入前後の各検査スコアの変化量・脳活動量を算出し,各訓練の効果を調査した.
【結果と考察】
訓練により,認知機能においてはA群で抑制機能・処理速度,B群で注意・作業記憶容量が改善し,口腔機能においてはA・B群でオーラルディアドコキネシスのスコアの改善を認めた.脳活動においてはA群のパタカラ発音時とB群の口唇運動時に右側内側前頭前野における活動量が減少したが,これは継続的な訓練により脳活動動員の効率化が図られたためと考えられた.A群の訓練とB群の訓練では効果を及ぼす認知ドメインが異なっていた可能性があり,訓練の種類や組み合わせで向上可能な認知機能が異なることが示唆された.試作した認知・口腔機能訓練は,認知・口腔の両機能の一部を向上することが示され,口腔の健康のみならず認知機能の維持・向上にも貢献できる可能性が見出された.
【目的】
口腔機能低下症やオーラルフレイルが社会問題化する中で,口腔機能低下と認知機能低下との関連も示唆されている.一方,口腔機能低下予防のために様々な口腔機能訓練法が用いられているが,それらの効果を適切に検証した研究は少なく,さらに口腔機能訓練が認知機能におよぼす影響については不明な点が多い.本研究は,さまざまな口腔機能訓練にゲームベース,いわゆる「脳トレ」の要素を含んだ認知訓練を組み合わせ,口腔機能とともに認知機能の改善をも目指す認知・口腔機能訓練プログラムを試作し,その効果について一般高齢者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験により検証した.
【方法】
認知・口腔機能訓練は,認知訓練要素と口腔機能訓練要素を組み合わせ,パタカラ発音×計算,口唇運動×Nバック,舌運動×抑制,舌運動×記憶の4種類を構築し,それぞれ7段階(認知負荷無し~認知負荷最大まで)の難易度を設定したプログラムを試作,タブレットに搭載して行わせた.60-80歳の健常高齢者58名を,A群:認知・口腔機能訓練を行う群,B群:口腔機能訓練のみ行う群,C群:コントロール群の3群にランダムに割り当てた.訓練は1日16分,介入期間は6週間とし,介入前後において各種認知機能・口腔機能検査,および口腔機能訓練中の脳活動測定を行った.脳活動測定には近赤外分光法を用い,左側背外側前頭前野と右側内側前頭前野の脳活動を計測した.介入前後の各検査スコアの変化量・脳活動量を算出し,各訓練の効果を調査した.
【結果と考察】
訓練により,認知機能においてはA群で抑制機能・処理速度,B群で注意・作業記憶容量が改善し,口腔機能においてはA・B群でオーラルディアドコキネシスのスコアの改善を認めた.脳活動においてはA群のパタカラ発音時とB群の口唇運動時に右側内側前頭前野における活動量が減少したが,これは継続的な訓練により脳活動動員の効率化が図られたためと考えられた.A群の訓練とB群の訓練では効果を及ぼす認知ドメインが異なっていた可能性があり,訓練の種類や組み合わせで向上可能な認知機能が異なることが示唆された.試作した認知・口腔機能訓練は,認知・口腔の両機能の一部を向上することが示され,口腔の健康のみならず認知機能の維持・向上にも貢献できる可能性が見出された.