公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

専門医研修会

現地発表+ライブ配信(オンデマンド配信あり)

専門医研修会(専門医研修単位認定セッション)
下顎位を再考する─補綴・歯周・矯正の観点から─

2024年7月7日(日) 14:20 〜 16:10 第1会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール A)

座長:小見山 道(日大松戸)、鮎川 保則(九州大)

共催:(特非)日本歯周病学会
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[SS-2] 重度歯周炎患者の口腔機能回復治療

*高橋 慶壮1 (1. 奥羽大学歯学部歯科保存学講座歯周病学分野)

[Abstract]
 カール・ポパーは「科学は真理ではなく,最新の仮説の集合体」に過ぎないと述べた.「複雑系の科学」に属する臨床科学では,仮説の検証が困難な課題に関するドグマが数多く存在する.「咬合性外傷」および「下顎位」の概念や定義を再考することは,学問の発展や新たな治療法の確立につながるであろう.
 咀嚼時に歯が動揺したり歯周組織に痛みを覚える状態では,咀嚼や咬合の安定は得られない.演者は,患者の行動変容を促しつつ,歯周治療によって感染に起因する炎症を消退させ,可及的な患歯の保存治療とパラファンクションの軽減や咬合挙上によって口腔機能を改善している.患者の主観的な満足が得られ長期予後も良好であれば,生理的咬合を確保できたと考えている.
 加齢に伴い残存歯数が減少すると咬合高径と口腔機能が低下するため,口腔機能回復治療を適応する.M. Amsterdamは1964年に「Periodontal prosthesis(歯周補綴)」,2000年に口腔インプラント治療を導入した続報を報告した.口腔機能回復にインプラント治療が果たす役割は大きい.一方,演者らは包括的歯周治療を実施した歯周炎患者の治療予後に関する後ろ向き研究から,StageⅣ,骨増大術,8本以上のインプラント体埋入がインプラント周囲炎に関わることを報告した(Yamazaki M. et al. J Pers Med 2022, 1723).とりわけ,歯周炎の重症度はインプラント周囲炎のリスクindicatorであるため,インプラント埋入本数を減らす工夫をしている.
 本講演では,重度歯周炎患者の包括的歯周治療の予後と実践知(暗黙知)を提示し,重度歯周炎患者の個別化医療および今後の課題を考察したい.

トピックス
●歯周補綴
●インプラント補綴
●個別化医療