公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

シンポジウム

現地発表+ライブ配信(オンデマンド配信あり)

シンポジウム5
咀嚼・咬合によるメカノバイオロジー:咀嚼・咬合力は体にどんな変化をもたらすか?

2024年7月7日(日) 09:00 〜 10:30 第2会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 国際会議室)

座長:江草 宏(東北大)、二川 浩樹(広島大)

ライブ配信のご視聴はこちら

[SY5-3] メカニカルストレスによる脳機能維持のメカニズム

*澤田 泰宏1 (1. 国立障害者リハビリテーションセンター病院臨床研究開発部)

[Abstract]
 歯周病などに伴う口腔機能の低下は,オーラルフレイルと呼ばれる総合的な身体機能低下につながる.具体的には,咀嚼不全・障害が認知機能低下の原因となり得る,すなわち,咀嚼が認知機能維持に重要な役割を果たすことが明らかとされている.しかし,咀嚼と認知機能とをつなぐメカニズムは未解明である.
 演者らは,身体運動,特に有酸素運動の多くでは足接地時に脳に上下方向の衝撃(加速度)が加わることに着目して研究を進めている.マウスやラットを用いた実験で,ヒトで言えば軽いジョギング程度に相当する速度(マウス: 分速10 m,ラット: 分速20 m)のトレッドミル走行中に頭部に生じる上下方向の加速度(約1 G)を再現する受動的頭部上下動実験を行い,脳へのメカニカルストレスが前頭前皮質における間質液流動を介して神経細胞機能を制御し恒常性維持に作用することを報告した(iScience 2020).さらに,高血圧ラットを用いた受動的頭部上下動実験およびヒトの軽いジョギング時に頭部に生じる衝撃を再現する座面上下動椅子を用いた臨床試験の結果をまとめて,頭部へのメカニカルストレスによる高血圧改善を示した論文を発表した(Nat Biomed Eng 2023).
 脳への力学的刺激は運動時のみならず咀嚼時にも生じる.咀嚼不全・障害により生じる認知機能障害に,頭部へのメカニカルストレスの不足・欠失が関与している可能性がある.

トピックス
●脳機能
●メカニカルストレス
●恒常性維持