[0202] ラットヒラメ筋廃用性萎縮に及ぼす間歇的伸張運動効果に関する筋線維タイプおよび長軸部位別検討
キーワード:廃用性筋萎縮, 間歇的伸張運動, 長軸部位
【はじめに,目的】
近年,廃用性萎縮筋に対する伸張運動の萎縮抑制効果に関する報告が多くなされている。しかし,先行研究での伸張運動は20分以上が多く臨床では実施困難と考えられる。また,筋の長軸部位別や筋線維タイプ別の萎縮抑制効果を検討したものは少ない。そこで本研究では,ラットヒラメ筋の廃用性萎縮進行中に短時間の間歇的伸張運動を実施し,筋線維横断面積(Cross-Sectional Area:CSA)を指標に,筋線維タイプ別の筋萎縮抑制効果を長軸部位の視点から検討することを目的とした。
【方法】
対象は8週齢のWistar系雄ラット21匹のヒラメ筋とした。群分けは通常飼育する群(対照群:n=7匹)と16日間の後肢懸垂処置により廃用性筋萎縮を惹起する群(懸垂群:n=7匹),後肢懸垂期間中に毎日,体重量の50%相当の負荷にて最初の1日を除く15日間,仰臥位(股・膝関節90°屈曲位)で足関節を他動的に背屈する間歇的伸張運動を5分間/日行う群(伸張群:n=7匹)とに振り分けた。実験期間終了後,対象筋を採取し,筋長の25%(近位部),50%(中央部),75%(遠位部)部位における凍結横断切片を作成した。その後,筋線維タイプ(タイプI,II線維)分類のため,ATPase染色を実施しCSAを各筋200本以上測定した。統計処理は二元配置分散分析を行い,下位検定としてBonferroniの方法による検定を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は所属大学動物実験委員会の承認を得て行った(承認番号:AP-122670)。
【結果】
タイプI・II線維の平均CSAは対照群と比較し,懸垂群,伸張群とも全ての部位で有意に低値を示した。また,懸垂群と比較して伸張群はタイプI・II線維とも全ての部位で有意に高値を示した。また,懸垂群内ではタイプI・II線維とも遠位部より近位部でより萎縮の程度が大きかった。伸張群内ではタイプI・II線維とも中央部で最もCSAの値が大きく,近位部と比較して遠位部でタイプI・II線維とも有意に高値を示した。部位別CSAの平均値の変化率は,タイプI線維において近位部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ58%,38%減少した。中央部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ50%,21%減少した。遠位部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ50%,35%減少した。タイプII線維において近位部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ55%,36%減少した。中央部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ54%,27%減少した。遠位部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ47%,24%減少した。
【考察】
木村ら(2010)は本研究と同様の伸張運動を体重の1/3負荷量で実施し,タイプI線維で筋萎縮抑制効果がみられタイプII線維ではみられなかった結果から,筋線維タイプによる反応の相違を報告している。本研究ではタイプI・II線維ともに伸張群は懸垂群よりも有意に高値を示し,体重量の50%負荷量ではタイプII線維においても筋萎縮抑制効果が示唆された。一方,石川ら(2013)は同様な伸張方法(体重量の100%負荷)で筋の遠位部でより大きな筋萎縮抑制効果を報告し,筋損傷の可能性を示唆している。本研究の体重量の50%負荷量では筋の中央部で最も筋萎縮抑制効果がみられ,負荷量による筋萎縮抑制効果の長軸部位別の違いが示唆された。今後は病理組織学的検討など,多方面から介入効果やより効果的な運動方法,頻度などを詳細に検証する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,体重の50%負荷量,5分間の短時間間歇的伸張運動による介入でタイプI・II線維とも廃用性筋萎縮抑制効果がみられた。また,筋の長軸部位によりその効果が異なることや,先行研究での負荷量では筋線維タイプ別に反応の相違がみられたことから,廃用性萎縮筋に対する伸張運動には適切な運動方法(時間,負荷量,部位)があることが示唆された。このことは,理学療法の基礎データとして有用と考えられる。
近年,廃用性萎縮筋に対する伸張運動の萎縮抑制効果に関する報告が多くなされている。しかし,先行研究での伸張運動は20分以上が多く臨床では実施困難と考えられる。また,筋の長軸部位別や筋線維タイプ別の萎縮抑制効果を検討したものは少ない。そこで本研究では,ラットヒラメ筋の廃用性萎縮進行中に短時間の間歇的伸張運動を実施し,筋線維横断面積(Cross-Sectional Area:CSA)を指標に,筋線維タイプ別の筋萎縮抑制効果を長軸部位の視点から検討することを目的とした。
【方法】
対象は8週齢のWistar系雄ラット21匹のヒラメ筋とした。群分けは通常飼育する群(対照群:n=7匹)と16日間の後肢懸垂処置により廃用性筋萎縮を惹起する群(懸垂群:n=7匹),後肢懸垂期間中に毎日,体重量の50%相当の負荷にて最初の1日を除く15日間,仰臥位(股・膝関節90°屈曲位)で足関節を他動的に背屈する間歇的伸張運動を5分間/日行う群(伸張群:n=7匹)とに振り分けた。実験期間終了後,対象筋を採取し,筋長の25%(近位部),50%(中央部),75%(遠位部)部位における凍結横断切片を作成した。その後,筋線維タイプ(タイプI,II線維)分類のため,ATPase染色を実施しCSAを各筋200本以上測定した。統計処理は二元配置分散分析を行い,下位検定としてBonferroniの方法による検定を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は所属大学動物実験委員会の承認を得て行った(承認番号:AP-122670)。
【結果】
タイプI・II線維の平均CSAは対照群と比較し,懸垂群,伸張群とも全ての部位で有意に低値を示した。また,懸垂群と比較して伸張群はタイプI・II線維とも全ての部位で有意に高値を示した。また,懸垂群内ではタイプI・II線維とも遠位部より近位部でより萎縮の程度が大きかった。伸張群内ではタイプI・II線維とも中央部で最もCSAの値が大きく,近位部と比較して遠位部でタイプI・II線維とも有意に高値を示した。部位別CSAの平均値の変化率は,タイプI線維において近位部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ58%,38%減少した。中央部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ50%,21%減少した。遠位部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ50%,35%減少した。タイプII線維において近位部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ55%,36%減少した。中央部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ54%,27%減少した。遠位部では対照群と比較し懸垂群,伸張群はそれぞれ47%,24%減少した。
【考察】
木村ら(2010)は本研究と同様の伸張運動を体重の1/3負荷量で実施し,タイプI線維で筋萎縮抑制効果がみられタイプII線維ではみられなかった結果から,筋線維タイプによる反応の相違を報告している。本研究ではタイプI・II線維ともに伸張群は懸垂群よりも有意に高値を示し,体重量の50%負荷量ではタイプII線維においても筋萎縮抑制効果が示唆された。一方,石川ら(2013)は同様な伸張方法(体重量の100%負荷)で筋の遠位部でより大きな筋萎縮抑制効果を報告し,筋損傷の可能性を示唆している。本研究の体重量の50%負荷量では筋の中央部で最も筋萎縮抑制効果がみられ,負荷量による筋萎縮抑制効果の長軸部位別の違いが示唆された。今後は病理組織学的検討など,多方面から介入効果やより効果的な運動方法,頻度などを詳細に検証する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,体重の50%負荷量,5分間の短時間間歇的伸張運動による介入でタイプI・II線維とも廃用性筋萎縮抑制効果がみられた。また,筋の長軸部位によりその効果が異なることや,先行研究での負荷量では筋線維タイプ別に反応の相違がみられたことから,廃用性萎縮筋に対する伸張運動には適切な運動方法(時間,負荷量,部位)があることが示唆された。このことは,理学療法の基礎データとして有用と考えられる。