第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 生活環境支援理学療法 口述

健康増進・予防4

Fri. May 30, 2014 2:25 PM - 3:15 PM 第6会場 (3F 304)

座長:井口茂(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻)

生活環境支援 口述

[0311] 虚弱高齢者の日常身体活動および行動特性と骨健康との関連性

朴眩泰, 島田裕之, 牧迫飛雄馬, 吉田大輔, 李相侖, 土井剛彦, 阿南祐也, 堤本広大, 原田和弘, 李成喆, 堀田亮, 裴成琉, 上村一貴, 中窪翔, 伊藤忠, 鈴木隆雄 (国立長寿医療研究センター)

Keywords:健康増進, 運動器, 介護予防

【はじめに,目的】
要介護状態を予防するためには身体機能の低下を防ぎ,生活行動の自立を促すことが必要であり,今後の後期高齢者数の増加に伴う要介護状態の危険性が高い高齢者の増加を考慮すると,効果的な介護予防対策を明らかにすることが緊要の課題である。本研究では,運動器機能低下抑制に必要な日常行動を提案するために,種々の機能低下を有する地域在住虚弱高齢者を対象に,3軸加速度センサー付き体動計および位置情報システム(GPS)により日常行動の実態を把握し,それらの質・パターン・頻度・距離・軌跡などの日常行動特性と運動器の健康状態との関連性を検証した。
【方法】
分析には,2011年8月~2012年2月に,国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターが実施したObu Study of Health Promotion for the Elderly(OSHPE)のデータの一部を用いた。OSHPEは,65歳以上の地域在住高齢者5104名を対象に実施した。その内,Friedらの基準により虚弱高齢者を特定し,うつ・変形性膝関節症・脳卒中・アルツハイマー病の既往・現病,および,解析に用いた変数に欠損のある者を除いた上で,1ヶ月間,体動計およびGPSを装着させ,日中(6時-18時)のデータが14日以上・1日10時間以上ある301名を解析対象者とした。解析に用いた項目は,独自にアルゴリズムを工夫した行動解析プログラムによる体動計・GPSのデータ(身体活動量・質・パターンと総移動および歩行(>5.4km/h)の軌跡および頻度)とDXA法による骨密度(腰椎2-4,大腿骨),超音波法による踵骨の音速(Speed of Sound),調節変数として基本属性(性別,年齢,教育歴,喫煙,飲酒,疾病暦など)であった。行動と骨粗鬆症との関連性を調べるために,解析対象者を身体行動の組み合わせにより四分位にわけ,骨粗鬆症・骨減少症との関連性を,基本属性・疾病状況の影響を調整変数とした共分散分析と多項ロジスティック回帰分析と一般線形モデルによる解析を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
OSHPEは,国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で,2008年に制定されたヘルシンキ宣言に従って実施された。
【結果】
一般線形回帰モデルの結果,日常行動(特に活動の量,質,屋外歩行頻度)は,有意な指数関数的な関連性があり(r=0.3,0.4,0.3,p<0.05),多変量調整共分散分析モデルおよび多重比較により,男女ともに歩数が6000歩/日かつ中強度活動10分/日かつ屋外歩行頻度2-3回/日以下の者は,大腿頸部の骨量が有意に低い傾向であった。更に,多項ロジスティック回帰分析により,交絡要因の影響を調整したオッズ比はそれぞれ日常活動の量1.5-1.7,質2.0-2.7,屋外歩行頻度1.4-1.9であった。
【考察】
本研究の特徴は,高齢者の外出行動を従来の主観的方法ではなく,GPSおよび体動計によって,客観的かつ正確に調べたことである。本研究により,身体機能が低下した虚弱高齢者において,機能低下抑制に必要な骨健康を継続するためには日常行動,特に身体活動の量・質(>6000歩・>10分)と屋外歩行頻度(>2-3回)を維持することが関連していると考えられる。このことは,外出歩行を行うことは,骨折の危険性の高い,虚弱高齢者の下肢骨量において,特に重要であることを示唆している。先行研究では,健常高齢者において良好な骨健康のためには7000歩かつ15分の中強度の活動閾値が報告されているが,機能低下した虚弱高齢者では,そのような閾値と異なるかどうかが本研究で検証された。本研究により,そのような関連性は,高齢者の運動器の機能程度によって異なることが確認された。本研究で示された横断的相互関連性が,今後,介入研究によって,厳密に解明されることが期待される。
【理学療法学研究としての意義】
虚弱高齢者の要介護,骨折を予防するために,身体活動・骨量の低下を防ぐことが重要なことである。そのための効果的な評価システムおよび介入方策を開発することは,理学療法学研究の大きな課題の1つである。機能低下の虚弱高齢者において,個人の行動特性による生活活動改善介入の可能性を示した点で,本研究は理学療法研究としての意義があると思われる。