[0477] 高齢者の運動動機に配慮した健康増進活動の検証
キーワード:健康教室, 運動動機, 運動習慣
【はじめに,目的】
近年,高齢者の健康づくりが活発化している影響もあり,「健康日本21」最終評価では60歳以上の運動習慣者は増加傾向にある。わが国の急速に進む高齢化を考慮すると今後も運動習慣者を増加させ,健康寿命を延伸していくことは理学療法士の重要な役割である。運動の習慣化を推進するには,その人に適した運動プログラムを考慮することはもとより,運動に対する動機や意欲といった心理的側面への配慮も必要である。また,運動動機が高齢者の身体運動に客観的に寄与することも報告されている。H24年6月よりY市にある高齢者クラブから,健康づくりに興味を持つ地域在住高齢者を対象とした健康教室の実施要請を受けた。教室では運動指導のみならず,運動動機に配慮した活動をおこなって運動の習慣化を促した。そこで,本研究では参加者の運動動機および運動機能の経時的な変化を検証することを目的とした。
【方法】
対象は健康教室に参加して6ヶ月間の経過を観察できた認知機能に問題がなく,屋外歩行自立レベルの地域在住高齢者12名(男性3名,女性9名,平均年齢76.5±5.1歳)とした。教室は高齢者クラブの依頼によって6ヶ月に1度を開催とし,運動の指導をする中で運動動機に対して以下の4点に配慮した。①健康寿命の延伸において運動習慣の重要性を講話した。②運動は1回30分程度のプログラムを4パターン指導した。③高齢者クラブでは週1回の頻度で自主的に集まって指導した運動を実施するように要請した。④運動機能評価のフィードバックし,健康相談を個別に応じた。評価では教室に参加して6ヶ月後の運動動機および運動機能を測定した。運動動機の評価では大友らの先行研究をもとに「情動的要求」「健康生活」「無能感と心身阻害」「社会生活」の4因子から構成される高齢者用運動動機尺度(以下,動機尺度)を用いた。運動機能評価では片脚立位,2stepテストを測定した。統計学的処理では介入前後の比較に対応のあるt検定を用い,有意水準を5%とし,統計ソフトJSTATを使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究目的および測定内容については個別に説明し,研究への協力を得た。研究の検証を公表することについても同意を得ている。
【結果】
教室開催時と6ヶ月後を比較して,運動動機において動機尺度では20点満点中,15.8±1.8点から16.8±1.9点と有意傾向を認めた(p=0.067)。運動機能において片脚立位では18.9秒±16.8秒から45.1秒±41.8秒(p<0.05),2stepでは1.10±0.23から1.23±0.19(p<0.01)と共に有意差を認めた。運動習慣では教室の開催から1年半が経過するも高齢者クラブでは自主的に集まり,週1回の頻度で運動が継続されている。
【考察】
高齢者の運動動機に配慮した今回の活動では,運動機能の向上だけでなく,参加者の生涯を通じた健康づくりにおける運動の必要性を意識づけたと考える。この運動に対する意識づけは,対象者の教室開催時における運動動機の維持と向上に良好な結果を及ぼし,運動の習慣化を促進できたと考える。また,国民栄養調査によると運動習慣者とは,1回30分以上,週2回以上,1年以上,運動を継続している者とされている。今回の活動では運動の頻度を週1回で設定したが,運動機能は有意に改善した。これは理学療法士の専門性を発揮した運動プログラムの提供と健康相談が効果的におこなえたためではないかと考える。さらに,今回の対象である高齢者クラブは,地域社会における親密な集団であり,ソーシャルサポートが得られやすく,団結力の深い取り組みによって心理的側面や運動機能に相乗効果を与えたことも考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士が健康増進活動を実施するにあたり,運動に対する心理的側面に配慮することは運動機能の向上だけでなく,運動の習慣化においても良好な結果が得られると考える。
近年,高齢者の健康づくりが活発化している影響もあり,「健康日本21」最終評価では60歳以上の運動習慣者は増加傾向にある。わが国の急速に進む高齢化を考慮すると今後も運動習慣者を増加させ,健康寿命を延伸していくことは理学療法士の重要な役割である。運動の習慣化を推進するには,その人に適した運動プログラムを考慮することはもとより,運動に対する動機や意欲といった心理的側面への配慮も必要である。また,運動動機が高齢者の身体運動に客観的に寄与することも報告されている。H24年6月よりY市にある高齢者クラブから,健康づくりに興味を持つ地域在住高齢者を対象とした健康教室の実施要請を受けた。教室では運動指導のみならず,運動動機に配慮した活動をおこなって運動の習慣化を促した。そこで,本研究では参加者の運動動機および運動機能の経時的な変化を検証することを目的とした。
【方法】
対象は健康教室に参加して6ヶ月間の経過を観察できた認知機能に問題がなく,屋外歩行自立レベルの地域在住高齢者12名(男性3名,女性9名,平均年齢76.5±5.1歳)とした。教室は高齢者クラブの依頼によって6ヶ月に1度を開催とし,運動の指導をする中で運動動機に対して以下の4点に配慮した。①健康寿命の延伸において運動習慣の重要性を講話した。②運動は1回30分程度のプログラムを4パターン指導した。③高齢者クラブでは週1回の頻度で自主的に集まって指導した運動を実施するように要請した。④運動機能評価のフィードバックし,健康相談を個別に応じた。評価では教室に参加して6ヶ月後の運動動機および運動機能を測定した。運動動機の評価では大友らの先行研究をもとに「情動的要求」「健康生活」「無能感と心身阻害」「社会生活」の4因子から構成される高齢者用運動動機尺度(以下,動機尺度)を用いた。運動機能評価では片脚立位,2stepテストを測定した。統計学的処理では介入前後の比較に対応のあるt検定を用い,有意水準を5%とし,統計ソフトJSTATを使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究目的および測定内容については個別に説明し,研究への協力を得た。研究の検証を公表することについても同意を得ている。
【結果】
教室開催時と6ヶ月後を比較して,運動動機において動機尺度では20点満点中,15.8±1.8点から16.8±1.9点と有意傾向を認めた(p=0.067)。運動機能において片脚立位では18.9秒±16.8秒から45.1秒±41.8秒(p<0.05),2stepでは1.10±0.23から1.23±0.19(p<0.01)と共に有意差を認めた。運動習慣では教室の開催から1年半が経過するも高齢者クラブでは自主的に集まり,週1回の頻度で運動が継続されている。
【考察】
高齢者の運動動機に配慮した今回の活動では,運動機能の向上だけでなく,参加者の生涯を通じた健康づくりにおける運動の必要性を意識づけたと考える。この運動に対する意識づけは,対象者の教室開催時における運動動機の維持と向上に良好な結果を及ぼし,運動の習慣化を促進できたと考える。また,国民栄養調査によると運動習慣者とは,1回30分以上,週2回以上,1年以上,運動を継続している者とされている。今回の活動では運動の頻度を週1回で設定したが,運動機能は有意に改善した。これは理学療法士の専門性を発揮した運動プログラムの提供と健康相談が効果的におこなえたためではないかと考える。さらに,今回の対象である高齢者クラブは,地域社会における親密な集団であり,ソーシャルサポートが得られやすく,団結力の深い取り組みによって心理的側面や運動機能に相乗効果を与えたことも考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士が健康増進活動を実施するにあたり,運動に対する心理的側面に配慮することは運動機能の向上だけでなく,運動の習慣化においても良好な結果が得られると考える。