[0584] 病病連携による入院呼吸リハビリテーションプログラムの効果
キーワード:入院呼吸リハビリテーション, 病病連携, 慢性呼吸不全
【はじめに】
慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)を中心とした慢性呼吸不全患者に対する呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)については,これまでその有効性に関する多くのエビデンスが示され,非薬物療法として確立されている。しかし呼吸リハの効果をもたらすためには,週3回以上で6週間程度の継続的な介入が必要であるとされており,在宅酸素療法が導入されている高齢呼吸不全患者では,通院による呼吸リハの実施は困難な場合多い。そのため,入院による集中的な呼吸リハの実施が求められるが,診断群分類包括評価(以下,DPC)が導入されている急性期病院での長期入院は難しいのが現状である。このような背景の中,我々は,DPCが導入されている急性期病院と,導入されていない地域の後方病院(慢性期)が協力し,病院と病院の連携による6週間の入院呼吸リハプログラムを作成し,実施してきた。そこで本研究では,本プログラムの内容やその効果を示し,新しい病病連携のモデルを提示することを目的とした。
【方法】本プログラムは平均在院日数11.8日である急性期医療を担うA病院と,慢性期・維持期患者の治療を中心としたB病院の呼吸器内科およびリハビリテーション科の連携によるものである。対象者は,A病院の呼吸器内科で診察・治療を受けている慢性呼吸不全患者の中から,担当医が本プログラムの内容を説明し,入院呼吸リハの希望を示し,全ての内容に同意した方で,選択基準は次の通りである。①呼吸器症状があり,COPD,間質性肺炎(以下,IP)などの臨床診断がなされている。②病態が安定している。③機能的な制限がある。④不安定な合併症がない(肺高血圧,透析,うつなど)⑤患者に意欲がある。⑥禁煙ができている。⑦十分なインフォームドコンセントが行われている。⑧COPDであれば肺機能でII期~III期。⑨上記項目から除外されないIP患者とした。対象者はA病院に2週間,その後B病院に転院して4週間の合計6週間入院する。A病院では呼吸器内科にて肺機能検査,心臓検査,血液検査等を実施し,リハビリ科において呼吸リハの導入と呼吸リハプログラムの作成を行う。そしてB病院へ転院後は,A病院からの情報を基に,午前,午後の1日2回,計2時間程度の呼吸リハを継続して実施する。呼吸リハプログラムはガイドラインに従い,両病院で同様の内容を実施する。そして呼吸リハ介入前後で,①身体組成,②漸増運動負荷試験,③定常負荷試験(運動継続時間),④膝伸展筋力,⑤呼吸筋力,⑥6分間歩行試験,健康関連QOL(SGRQ,CAT),⑦呼吸困難(MRC),⑧不安・抑うつ検査(HADS)を評価する。尚,介入後の評価はB病院を退院後,A病院にて同一検者が行った。そして本プログラムによる効果の検討は,呼吸リハ介入前後の測定値を対応のあるt検定で分析した。
【倫理的配慮・説明と同意】全対象者には本研究の内容および目的について文書による説明を行い,同意を得た。なお,本研究は,本学倫理審査委員会および各病院の倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】2012年4月~2013年11月までに本プログラムに参加し,呼吸リハを完了した対象者は12名(男性11名,女性1名)で,診断名はCOPD 7名,IP 3名,その他2名であった。本プログラムによって,運動継続時間,膝伸展筋力,吸気筋力,6分間歩行距離,健康関連QOLは有意な改善(p<0.05,p<0.01)を示したが,身体組成やHADSスコアは有意な改善が認められなかった。
【考察】6週間の入院呼吸リハによって身体機能や健康関連QOLの有意な改善が認められ,また6分間歩行距離やSGRQなどでは臨床的に意味のある最小差(MCID)を超える変化があったことから,本プログラムは有効であったと考えられた。その一方で,身体組成やHADSのスコアは有意な改善を示さなかったことから,栄養療法や心理・社会的なサポートの必要性が明らかとなった。今後は本プログラム終了後,在宅における継続的な支援体制を構築していくことが重要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,機能の異なる2つの病院が連携して入院リハを実施するという新しい試みであり,診療科だけでなくリハビリ科が連携することで,今後より多くの呼吸不全患者に対し呼吸リハの機会を提供できるだけでなく,その効果(エビデンス)を示すデータの蓄積につながると考えられる。
慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)を中心とした慢性呼吸不全患者に対する呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)については,これまでその有効性に関する多くのエビデンスが示され,非薬物療法として確立されている。しかし呼吸リハの効果をもたらすためには,週3回以上で6週間程度の継続的な介入が必要であるとされており,在宅酸素療法が導入されている高齢呼吸不全患者では,通院による呼吸リハの実施は困難な場合多い。そのため,入院による集中的な呼吸リハの実施が求められるが,診断群分類包括評価(以下,DPC)が導入されている急性期病院での長期入院は難しいのが現状である。このような背景の中,我々は,DPCが導入されている急性期病院と,導入されていない地域の後方病院(慢性期)が協力し,病院と病院の連携による6週間の入院呼吸リハプログラムを作成し,実施してきた。そこで本研究では,本プログラムの内容やその効果を示し,新しい病病連携のモデルを提示することを目的とした。
【方法】本プログラムは平均在院日数11.8日である急性期医療を担うA病院と,慢性期・維持期患者の治療を中心としたB病院の呼吸器内科およびリハビリテーション科の連携によるものである。対象者は,A病院の呼吸器内科で診察・治療を受けている慢性呼吸不全患者の中から,担当医が本プログラムの内容を説明し,入院呼吸リハの希望を示し,全ての内容に同意した方で,選択基準は次の通りである。①呼吸器症状があり,COPD,間質性肺炎(以下,IP)などの臨床診断がなされている。②病態が安定している。③機能的な制限がある。④不安定な合併症がない(肺高血圧,透析,うつなど)⑤患者に意欲がある。⑥禁煙ができている。⑦十分なインフォームドコンセントが行われている。⑧COPDであれば肺機能でII期~III期。⑨上記項目から除外されないIP患者とした。対象者はA病院に2週間,その後B病院に転院して4週間の合計6週間入院する。A病院では呼吸器内科にて肺機能検査,心臓検査,血液検査等を実施し,リハビリ科において呼吸リハの導入と呼吸リハプログラムの作成を行う。そしてB病院へ転院後は,A病院からの情報を基に,午前,午後の1日2回,計2時間程度の呼吸リハを継続して実施する。呼吸リハプログラムはガイドラインに従い,両病院で同様の内容を実施する。そして呼吸リハ介入前後で,①身体組成,②漸増運動負荷試験,③定常負荷試験(運動継続時間),④膝伸展筋力,⑤呼吸筋力,⑥6分間歩行試験,健康関連QOL(SGRQ,CAT),⑦呼吸困難(MRC),⑧不安・抑うつ検査(HADS)を評価する。尚,介入後の評価はB病院を退院後,A病院にて同一検者が行った。そして本プログラムによる効果の検討は,呼吸リハ介入前後の測定値を対応のあるt検定で分析した。
【倫理的配慮・説明と同意】全対象者には本研究の内容および目的について文書による説明を行い,同意を得た。なお,本研究は,本学倫理審査委員会および各病院の倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】2012年4月~2013年11月までに本プログラムに参加し,呼吸リハを完了した対象者は12名(男性11名,女性1名)で,診断名はCOPD 7名,IP 3名,その他2名であった。本プログラムによって,運動継続時間,膝伸展筋力,吸気筋力,6分間歩行距離,健康関連QOLは有意な改善(p<0.05,p<0.01)を示したが,身体組成やHADSスコアは有意な改善が認められなかった。
【考察】6週間の入院呼吸リハによって身体機能や健康関連QOLの有意な改善が認められ,また6分間歩行距離やSGRQなどでは臨床的に意味のある最小差(MCID)を超える変化があったことから,本プログラムは有効であったと考えられた。その一方で,身体組成やHADSのスコアは有意な改善を示さなかったことから,栄養療法や心理・社会的なサポートの必要性が明らかとなった。今後は本プログラム終了後,在宅における継続的な支援体制を構築していくことが重要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,機能の異なる2つの病院が連携して入院リハを実施するという新しい試みであり,診療科だけでなくリハビリ科が連携することで,今後より多くの呼吸不全患者に対し呼吸リハの機会を提供できるだけでなく,その効果(エビデンス)を示すデータの蓄積につながると考えられる。