第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 生活環境支援理学療法 口述

福祉用具・地域在宅1

Fri. May 30, 2014 5:10 PM - 6:00 PM 第6会場 (3F 304)

座長:小笠原正(近森リハビリテーション病院理学療法科)

生活環境支援 口述

[0591] 訪問リハビリ利用者の外出頻度向上に寄与する要因分析

堀健作1, 田邉龍太1, 青木大輔1, 松尾恵利香1, 村尾彰悟1, 江原加一1, 福田恵美子1, 江口宏1, 百留あかね1, 大久保智明1, 野尻晋一1, 當利賢一2, 谷口善昭3, 山永裕明3 (1.医療法人社団寿量会訪問看護ステーション清雅苑, 2.医療法人社団寿量会介護老人保健施設清雅苑, 3.医療法人社団寿量会熊本機能病院)

Keywords:訪問リハ, 外出頻度, 排泄

【はじめに,目的】
訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)による支援の一つに,閉じこもりを解消し,生活圏拡大による活動性向上を図るため外出支援を実施する。その際,利用者や家族より外出先での移動や排泄などの問題で相談を受けることが多々ある。そこで,独自に作成した外出評価を用いて,支援内容の優先課題について調査検討したので報告する。
【方法】
対象は当事業所で,平成25年7月に訪問リハを1ヶ月以上継続している利用者89名とした。内訳は男性43名・女性46名,疾患は脳血管障害44名,骨関節疾患16名,神経筋疾患22名,その他5名である。訪問リハスタッフによる質問紙法で1.病院や通所サービス以外の場所への外出頻度(月1回以上・2~3ヶ月に1回程度・半年に1回程度・外出していない),2.外出する際の介助者,3.外出評価を実施した。外出評価内容は,外出前の状況で①過去1ヶ月の睡眠状況,②準備の実施状況,③準備に要する時間,④外出するための意欲,⑤外出するための環境,外出先の状況⑥排泄,⑦移動,⑧コミュニケーション,⑨食事の9項目を十分・やや十分・やや不十分・不十分の4段階で調査した。さらに,9項目に対してやや不十分・不十分と回答した利用者には,その理由を調査した。また,外出評価から顧客満足度調査で用いられるCS分析を行い優先すべき項目を抽出した。優先すべき項目は満足率が低く,かつ外出頻度に対する決定係数が高い項目とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当法人倫理委員会の承認を得て実施した。利用者には口頭・紙面にて研究の目的及び内容を説明し同意を得た。
【結果】
外出頻度は月1回以上:59名,2~3ヶ月に1回程度:9名,半年に1回程度:6名,外出していない:15名であった。外出する際の介助者は,不要:18名,家族:57名,サービス提供スタッフ:10名,近隣の方:1名であった。外出評価の結果,十分・やや十分の割合は①睡眠状況87%,②準備の実施状況83%,③準備に要する時間65%,④外出するための意欲70%,⑤外出するための環境74%,⑥排泄65%,⑦移動52%,⑧コミュニケーション91%,⑨食事70%であった。CS分析結果では,満足率が低く,かつ外出頻度に対する決定係数が高い項目で外出するための意欲(満足率52%,決定係数0.25),移動(満足率36%,決定係数0.11),排泄(満足率56%,決定係数0.11)の順で3項目が優先すべき項目で抽出された。以上3項目では,意欲では何となく疲れるなどの回答が52%,移動では歩行時に転倒しそうで不安など51%,車椅子を駆動できないなど環境要因23%,排泄では多目的トイレの位置を知らないなどの環境要因,排泄回数が多く失禁に対する精神的不安要因の回答が70%を占めた。意欲が十分・やや十分でも一緒に外出する家族の存在がない利用者8名では外出頻度を維持できていなかった。意欲や移動,排泄がやや不十分・不十分でも家族と外出し,外出頻度を維持している割合は56%であった。
【考察】
CS分析の結果より外出頻度の向上には,意欲向上や外出先での移動の確立に加え,外出先での排泄の問題解決に優先して取り組む必要性が示唆された。外出頻度の減少と意欲や移動能力の低下についての知見は散見するが,排泄の問題については調査されていない。今回の結果にて排泄でやや不十分・不十分と答えた利用者は,多目的トイレの位置を知らないなどの環境要因や排泄回数が多く失禁に対する精神的不安要因に関する回答が7割と多くみられ,訪問リハで支援できる課題も多いと考える。そのため,多目的トイレの位置情報の提供や事前の下見,実際の外出練習に加え,トイレが間に合わなかった場合の対策を詰めるなども必要と考える。外出頻度が低下する理由に,外出への意欲が十分・やや十分でも一緒に外出する介助者の存在が無いことが考えられる。逆に,意欲や移動,排泄がやや不十分・不十分でも,一緒に外出する家族の存在があると,外出時の課題を乗り越え外出頻度を維持していると考えた。
以上のことより,意欲や移動,排泄の課題へ単独に支援するのではなく,それら以外の課題に対しても支援していく必要があると考える。また,本人と外出する家族などと外出時の課題を共有し支援すること,家族などインフォーマルサービスの関わりが難しい場面では外出援助のヘルパーや福祉タクシーなどフォーマルサービスの提案なども考慮すべきであると考える。
【理学療法学研究としての意義】
意欲・移動・排泄の課題への適切な支援やインフォーマル・フォーマルサービスの有効活用で,利用者の外出頻度の向上や閉じこもり解消に繋がり,生活再建とQOL向上に繋がると考える。