[O-0691] 本邦における余暇の活動性と膝関節屈曲角度との関連性
~生活様式の違いによる検討~
キーワード:関節可動域, 生活様式, 日常生活活動
【はじめに,目的】
リハビリテーションの最重要課題は,より高いADLを獲得することであり,そのためには生活様式に見合う必要な関節可動域を把握しておくことは重要である。日本人の生活様式は欧米化してきているが,現在でも床上での生活を基本とし,胡坐や正座をはじめとして,膝関節の深屈曲が求められることが多い。人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)の目的は除痛と支持性の獲得であるが,日本の生活様式を鑑みると,より大きな膝関節屈曲可動域の獲得はそれらと並んで重要と考えられる。これまでに欧米における,健常者やTKA後の活動性と膝関節屈曲角度を経時的に調査したものはあるが,日本特有の和式生活を考慮した報告はない。
今回,Preliminary studyとして若年健常者を対象に,余暇の活動性と膝関節屈曲角度の変化を経時的に測定し,和式と洋式の結果を比較することで生活様式の違いによる影響を検討したので報告する。
【方法】
被験者は和式10名,洋式10名の膝関節に障害のない若年健常者20名。生活様式の判定は,内閣府政策統括官共生社会政策担当による2005年度「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」での調査項目を参考に,就寝,食事,くつろぎ,靴の着脱,トイレ,立ち上がり場面,外出時の休息場面の7項目を設定し,アンケートにより行った。
被験者は休日の起床後,8時から20時までの12時間測定を行った。シャワーおよび入浴は機器の保全のために禁止とし,それ以外は特に制限を設けず,普段の生活を過ごしていただいた。
測定項目は膝関節屈曲角度,活動性とし,膝関節角度は電気角度計Flexible-electro goniometer(Biometric社)を右膝に装着し,1秒毎に測定した。また活動性は活動量計Intelligent Devise for Energy Expenditure and Activity(Mini Sun社)を用いて臥位・端坐位・リクライニング座位・立位姿勢・歩行などの各々の活動性を計測した。さらに膝関節最大屈曲角度,および全測定データから膝関節屈曲角度90°以上と120°以上の割合を算出し,その際とっていた姿勢・動作の身体活動性割合を算出した。統計はt検定を行い,有意水準はp<0.05とした。
【結果】
最大膝関節屈曲角度は全体平均では133.2±16.2°で,生活様式別でみると和式では132.6±12.2°,洋式では133.8±20.1°であった。また膝関節屈曲90°以上の割合は全体では25.2±3.2%,生活様式別でみると和式28.1±3.2%,洋式21.1±3.1%,120°以上の割合は全体平均では5.7±0.8%,和式8.1±1.5%,洋式2.9±0.3%であった。しかし最大膝関節屈曲角度,屈曲角度割合ともに両群間に有意差は認めなかった。
また膝関節屈曲角度が90°以上の際の活動性の割合は,和式群では臥位24%,リクライニング座位22%,端座位50%,立位4%,洋式群は臥位23%,リクライニング座位27%,端座位45%,立位5%であった。膝関節屈曲角度120°以上では和式群で臥位29%,リクライニング座位25%,端座位42%,立位4%,洋式群は臥位3%,リクライニング座位15%,端座位74%,立位8%となり,活動性の割合においても両群間に有意差はなかった。
【考察】
Alaitiらの健常欧米人を対象とした研究では膝関節屈曲120°以上の割合が0.17%であったと報告している。今回,全体平均では膝関節屈曲90°以上が全測定時間中の25%,120°以上が5.7%屈曲肢位をとっており,欧米人よりも深屈曲する機会が多いことが分かった。日本人の生活においては膝関節屈曲角度90°では不十分であり,QOLを考えると120°以上の確保が重要であることが示唆された。
我々は,和式生活は床上での胡坐や横すわりなどで過ごす機会が多いため,膝関節を深屈曲する場面が多いと考えていたが,結果にばらつきが多く両群間に有意差は認めなかった。その理由として現代の生活様式が和洋折衷となっていることが影響した可能性がある。
また膝関節屈曲90°以上(全体の25.2%)の際の活動性の割合は,おおよそ半数が端座位であり,120°以上(全体の5.5%)では和式42%,洋式74%が端座位となり,TKA術後等により椅子中心での生活を余儀なくされた場合においても膝関節屈曲可動域の獲得が重要であることを示唆した。
【理学療法学研究としての意義】
日本における活動性と膝関節屈曲角度の変化を経時的に測定した報告はない。今回の結果は,日本の日常生活では和式洋式に関わらず,120°以上の膝屈曲角度が必要であることを示唆し,理学療法実施における目標設定の一助となると考えられる。
リハビリテーションの最重要課題は,より高いADLを獲得することであり,そのためには生活様式に見合う必要な関節可動域を把握しておくことは重要である。日本人の生活様式は欧米化してきているが,現在でも床上での生活を基本とし,胡坐や正座をはじめとして,膝関節の深屈曲が求められることが多い。人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)の目的は除痛と支持性の獲得であるが,日本の生活様式を鑑みると,より大きな膝関節屈曲可動域の獲得はそれらと並んで重要と考えられる。これまでに欧米における,健常者やTKA後の活動性と膝関節屈曲角度を経時的に調査したものはあるが,日本特有の和式生活を考慮した報告はない。
今回,Preliminary studyとして若年健常者を対象に,余暇の活動性と膝関節屈曲角度の変化を経時的に測定し,和式と洋式の結果を比較することで生活様式の違いによる影響を検討したので報告する。
【方法】
被験者は和式10名,洋式10名の膝関節に障害のない若年健常者20名。生活様式の判定は,内閣府政策統括官共生社会政策担当による2005年度「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」での調査項目を参考に,就寝,食事,くつろぎ,靴の着脱,トイレ,立ち上がり場面,外出時の休息場面の7項目を設定し,アンケートにより行った。
被験者は休日の起床後,8時から20時までの12時間測定を行った。シャワーおよび入浴は機器の保全のために禁止とし,それ以外は特に制限を設けず,普段の生活を過ごしていただいた。
測定項目は膝関節屈曲角度,活動性とし,膝関節角度は電気角度計Flexible-electro goniometer(Biometric社)を右膝に装着し,1秒毎に測定した。また活動性は活動量計Intelligent Devise for Energy Expenditure and Activity(Mini Sun社)を用いて臥位・端坐位・リクライニング座位・立位姿勢・歩行などの各々の活動性を計測した。さらに膝関節最大屈曲角度,および全測定データから膝関節屈曲角度90°以上と120°以上の割合を算出し,その際とっていた姿勢・動作の身体活動性割合を算出した。統計はt検定を行い,有意水準はp<0.05とした。
【結果】
最大膝関節屈曲角度は全体平均では133.2±16.2°で,生活様式別でみると和式では132.6±12.2°,洋式では133.8±20.1°であった。また膝関節屈曲90°以上の割合は全体では25.2±3.2%,生活様式別でみると和式28.1±3.2%,洋式21.1±3.1%,120°以上の割合は全体平均では5.7±0.8%,和式8.1±1.5%,洋式2.9±0.3%であった。しかし最大膝関節屈曲角度,屈曲角度割合ともに両群間に有意差は認めなかった。
また膝関節屈曲角度が90°以上の際の活動性の割合は,和式群では臥位24%,リクライニング座位22%,端座位50%,立位4%,洋式群は臥位23%,リクライニング座位27%,端座位45%,立位5%であった。膝関節屈曲角度120°以上では和式群で臥位29%,リクライニング座位25%,端座位42%,立位4%,洋式群は臥位3%,リクライニング座位15%,端座位74%,立位8%となり,活動性の割合においても両群間に有意差はなかった。
【考察】
Alaitiらの健常欧米人を対象とした研究では膝関節屈曲120°以上の割合が0.17%であったと報告している。今回,全体平均では膝関節屈曲90°以上が全測定時間中の25%,120°以上が5.7%屈曲肢位をとっており,欧米人よりも深屈曲する機会が多いことが分かった。日本人の生活においては膝関節屈曲角度90°では不十分であり,QOLを考えると120°以上の確保が重要であることが示唆された。
我々は,和式生活は床上での胡坐や横すわりなどで過ごす機会が多いため,膝関節を深屈曲する場面が多いと考えていたが,結果にばらつきが多く両群間に有意差は認めなかった。その理由として現代の生活様式が和洋折衷となっていることが影響した可能性がある。
また膝関節屈曲90°以上(全体の25.2%)の際の活動性の割合は,おおよそ半数が端座位であり,120°以上(全体の5.5%)では和式42%,洋式74%が端座位となり,TKA術後等により椅子中心での生活を余儀なくされた場合においても膝関節屈曲可動域の獲得が重要であることを示唆した。
【理学療法学研究としての意義】
日本における活動性と膝関節屈曲角度の変化を経時的に測定した報告はない。今回の結果は,日本の日常生活では和式洋式に関わらず,120°以上の膝屈曲角度が必要であることを示唆し,理学療法実施における目標設定の一助となると考えられる。