[O-0692] COPD患者の呼吸リハビリテーション効果
CATとSGRQの比較
キーワード:COPD Assessment Test, SGRQ, 呼吸リハビリテーション
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者のQOL評価であるSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)は,自己記入が可能で臨床的に有用性が高く,幅広く用いられているが,質問項目が多いために回答・採点に時間がかかる。そのような欠点から最近ではSGRQを簡略化し,SGRQと強い相関が示されているCOPD Assessment Test(CAT)が用いられてきている。CATはCOPD患者の呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)前後でも有意な改善が報告されているが,他の臨床的評価項目の変化量との関連性については報告が少ない。
今回,呼吸リハ前後でのCAT,SGRQと他の臨床的評価項目の変化量を解析し,CATがSGRQ同様の効果判定法となりうるかを検討した。
【方法】
2012年12月から2014年10月までの期間に増悪や呼吸リハ目的で当院に入院後呼吸リハを実施し,CATの評価が可能であったCOPD患者52名のうち,呼吸リハ実施が4週未満や転院したものを除外した36例を対象とした。カルテより後方視的に以下の項目について調査した。
①SGRQ ②修正MRC息切れスケール(mMRC)③BMI ④呼吸機能 ⑤6分間歩行距離(6MWD)⑥筋力評価(握力,下肢筋力)⑦The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL)⑧Hospital Anxiety and Depression score(HADS)⑨Center for epidemiologic studies depression scale(CES-D)⑩MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)
統計処理は,呼吸リハ前後の変化をMann-WhitneyのU検定と効果量を用い,CAT及びSGRQの変化量と,他の評価項目の変化量との関連をSpearmanの順位相関係数にて解析した。またCAT及びSGRQ Totalの臨床的に意義のある最小変化量(MCID)のCAT 2点,SGRQ 4点をカットオフ値として用い,呼吸リハ前後の改善もしくは不変・悪化の傾向を,χ2検定にて検討し,危険率5%を有意水準とした。
【結果】
対象36名(男性:34例)の平均年齢は73.2±7.4歳,対象者の内訳は,mMRC gradeI:3例,II:9例,III:8例,IV:16例であり,22例(61.1%)が酸素療法を行っていた。呼吸リハ実施期間は平均49.1日であった。
呼吸リハ前後において改善した項目は,CAT(平均19.8±7.4→13.9±7.0点),SGRQ(Total平均56.9±16.3→47.6±17.3点),mMRC,呼吸機能,6MWD,筋力,NRADL,HADS(抑うつ),SF-36(MCS)であった。効果量(サンプルサイズによって変化せず,絶対値が大きいほど効果が大きい指標)は,CATが0.82,SGRQ Totalは0.55であり,CATの高い反応性が示された。
CATの変化量は,SGRQ,CES-D,NRADL(動作速度,息切れ,連続歩行距離,合計)の変化量と相関を認めた。SGRQの変化量は,TotalとSF-36(PCS)・NRADL(連続歩行距離)が,SymptomsとHADS(抑うつ),ActivityとmMRC・NRADL(連続歩行距離),ImpactsとNRADL(連続歩行距離)にそれぞれ相関を認めた。呼吸リハ前後でのMCIDを用いた,CATとSGRQの改善,不変・悪化の変化は,一致66.7%,不一致33.3%であった。
【考察】
呼吸リハ前後ではCAT,SGRQとともに身体機能を中心に改善し,効果量はCATがSGRQより高い反応性を示した。CATとSGRQの変化量においては先行研究と同様に中等度の相関を認め,更にCATがNRADLと並行して改善する傾向を示した。またCATは主観的,NRADLでは客観的と回答方法は異なるものの,変化量が相関していたことから,CATが改善している時はADLも改善している可能性があることが示唆された。しかしMCIDを用いた呼吸リハ前後のCATとSGRQの変化では,CATで改善を認めながらもSGRQで悪化を呈すものもおり,一定の傾向を示していなかったことから,CATとSGRQは同様の効果判定とはなりにくいことも示唆された。この要因として,CATとSGRQでは採点方法や回答する活動範囲の違いによるものが考えられた。採点方法に関しては,CATやNRADLの加点方法が1点ごとであるのに対し,SGRQは設問ごとに点数配分が異なることが影響している。また問診する活動範囲に関しては,CATやNRADLでは屋内外の活動範囲を中心に回答することに対し,SGRQは趣味や余暇活動など,より広範な活動範囲まで回答する違いがある。
CATは質問項目がSGRQより少ないため短時間で,臨床上簡便に対象者の状態を把握することが出来る利点があるが,SGRQよりHRQoLを詳細に分析出来るわけではない。そのため,臨床上評価に時間が制限されている場合や,SGRQの設問回答に苦渋する高齢者にはCATで経過を追うなど,両者の特性を考慮し,対象者に応じて使い分けることが望ましいと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
CATはSGRQよりCOPD患者に対する呼吸リハの効果判定として簡便で,ADLも把握し易い臨床的な評価表であることが示唆された。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者のQOL評価であるSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)は,自己記入が可能で臨床的に有用性が高く,幅広く用いられているが,質問項目が多いために回答・採点に時間がかかる。そのような欠点から最近ではSGRQを簡略化し,SGRQと強い相関が示されているCOPD Assessment Test(CAT)が用いられてきている。CATはCOPD患者の呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)前後でも有意な改善が報告されているが,他の臨床的評価項目の変化量との関連性については報告が少ない。
今回,呼吸リハ前後でのCAT,SGRQと他の臨床的評価項目の変化量を解析し,CATがSGRQ同様の効果判定法となりうるかを検討した。
【方法】
2012年12月から2014年10月までの期間に増悪や呼吸リハ目的で当院に入院後呼吸リハを実施し,CATの評価が可能であったCOPD患者52名のうち,呼吸リハ実施が4週未満や転院したものを除外した36例を対象とした。カルテより後方視的に以下の項目について調査した。
①SGRQ ②修正MRC息切れスケール(mMRC)③BMI ④呼吸機能 ⑤6分間歩行距離(6MWD)⑥筋力評価(握力,下肢筋力)⑦The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL)⑧Hospital Anxiety and Depression score(HADS)⑨Center for epidemiologic studies depression scale(CES-D)⑩MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)
統計処理は,呼吸リハ前後の変化をMann-WhitneyのU検定と効果量を用い,CAT及びSGRQの変化量と,他の評価項目の変化量との関連をSpearmanの順位相関係数にて解析した。またCAT及びSGRQ Totalの臨床的に意義のある最小変化量(MCID)のCAT 2点,SGRQ 4点をカットオフ値として用い,呼吸リハ前後の改善もしくは不変・悪化の傾向を,χ2検定にて検討し,危険率5%を有意水準とした。
【結果】
対象36名(男性:34例)の平均年齢は73.2±7.4歳,対象者の内訳は,mMRC gradeI:3例,II:9例,III:8例,IV:16例であり,22例(61.1%)が酸素療法を行っていた。呼吸リハ実施期間は平均49.1日であった。
呼吸リハ前後において改善した項目は,CAT(平均19.8±7.4→13.9±7.0点),SGRQ(Total平均56.9±16.3→47.6±17.3点),mMRC,呼吸機能,6MWD,筋力,NRADL,HADS(抑うつ),SF-36(MCS)であった。効果量(サンプルサイズによって変化せず,絶対値が大きいほど効果が大きい指標)は,CATが0.82,SGRQ Totalは0.55であり,CATの高い反応性が示された。
CATの変化量は,SGRQ,CES-D,NRADL(動作速度,息切れ,連続歩行距離,合計)の変化量と相関を認めた。SGRQの変化量は,TotalとSF-36(PCS)・NRADL(連続歩行距離)が,SymptomsとHADS(抑うつ),ActivityとmMRC・NRADL(連続歩行距離),ImpactsとNRADL(連続歩行距離)にそれぞれ相関を認めた。呼吸リハ前後でのMCIDを用いた,CATとSGRQの改善,不変・悪化の変化は,一致66.7%,不一致33.3%であった。
【考察】
呼吸リハ前後ではCAT,SGRQとともに身体機能を中心に改善し,効果量はCATがSGRQより高い反応性を示した。CATとSGRQの変化量においては先行研究と同様に中等度の相関を認め,更にCATがNRADLと並行して改善する傾向を示した。またCATは主観的,NRADLでは客観的と回答方法は異なるものの,変化量が相関していたことから,CATが改善している時はADLも改善している可能性があることが示唆された。しかしMCIDを用いた呼吸リハ前後のCATとSGRQの変化では,CATで改善を認めながらもSGRQで悪化を呈すものもおり,一定の傾向を示していなかったことから,CATとSGRQは同様の効果判定とはなりにくいことも示唆された。この要因として,CATとSGRQでは採点方法や回答する活動範囲の違いによるものが考えられた。採点方法に関しては,CATやNRADLの加点方法が1点ごとであるのに対し,SGRQは設問ごとに点数配分が異なることが影響している。また問診する活動範囲に関しては,CATやNRADLでは屋内外の活動範囲を中心に回答することに対し,SGRQは趣味や余暇活動など,より広範な活動範囲まで回答する違いがある。
CATは質問項目がSGRQより少ないため短時間で,臨床上簡便に対象者の状態を把握することが出来る利点があるが,SGRQよりHRQoLを詳細に分析出来るわけではない。そのため,臨床上評価に時間が制限されている場合や,SGRQの設問回答に苦渋する高齢者にはCATで経過を追うなど,両者の特性を考慮し,対象者に応じて使い分けることが望ましいと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
CATはSGRQよりCOPD患者に対する呼吸リハの効果判定として簡便で,ADLも把握し易い臨床的な評価表であることが示唆された。