[P1-A-0366] コンピテンシー評価を取り入れた臨床実習生の情意領域評価表
内的整合性と構成概念妥当性の検討
Keywords:臨床実習生, 情意領域, コンピテンシー
【はじめに,目的】
臨床実習生の情意領域評価方法は養成校毎に種々工夫されている。当校では,臨床実習生の行動特性と情意領域を把握する目的で,平成20年度からコンピテンシー評価を取り入れた情意領域評価を採用し,平成24年度には細項目と配点等を見直した改訂版を作成し現在に至っている。コンピテンシーとは「課業や職責を有能に果たすために必要とされる一連の行動パターン(Boam & Sparrow,1992)」などと表現されている。情意領域評価表改訂版を採用した学年の臨床実習カリキュラムが一通り終了した現時点で,評価表各項目で最高点を取る学生の割合と,評価表自体の内的整合性と構成概念妥当性を確認することを目的として本研究を行った。
【方法】
対象は平成26年11月の時点で在学期間4年目の4年次生でかつ総合臨床実習を終了できた学生47人(男性25人,女性22人)とした。情意領域評価表改訂版は[態度]と[基本的技能]の2つの大項目から成り,[態度]は「共感・感性」「実習生・職員との協調性」「自己実現」「社会性・接遇」「責任感」「性格」「規律性」「対象者の尊重」「倫理性・使命感」の中項目9つ,[基本的技能]は「説明と同意」「コミュニケーション力」の中項目2つがそれぞれに配置された。さらに,各中項目は2~5個の細項目に分けられたため,合計33個の細項目で構成されている。細項目は4段階順序尺度(0~3点:点数が高いほどコンピテンシーが優れていることを表す)の選択肢で構成され,各臨床実習の最後に実習指導者により評定された。
データ解析には4年次総合臨床実習終了時のデータを使用した。細項目毎に最高点を付けられた学生の割合を最高点到達率として計算した。また,各中項目の平均値から内的整合性の指標としてクロンバックのアルファ係数(α係数)を算出し,構成概念妥当性を確認するために主成分分析を行った。
【結果】
最高点到達率が75%以上であった細項目は,中項目「社会性・接遇」に含まれる「あいさつ」と「身だしなみ」,中項目「積極性」の「時間厳守」,中項目「性格」の「謙虚さ」,中項目「実習生・職員との協調性」の「実習生・職員との協調性1(人間関係への配慮)」,そして中項目「規律性」の「公私の区別(人間関係)」と「公私の区別(物品)」の全7項目であった。最高点到達率が20%以下の項目は,中項目「倫理性・使命感」の「社会的正義」,中項目「性格」の「判断の適切さ」,中項目「説明と同意」の「情報提供」,「コミュニケーション力」の「自分の考えを伝える」「論理性・整合性」であった。
α係数は0.93(標準化信頼性係数=0.94)となり,除外項目とその他の項目の合計との相関係数は全てα係数よりも小さな値(0.65~0.85)であった。主成分分析の結果,第1主成分として「積極性」「性格」「コミュニケーション力」,第2主成分として「対象者の尊重」「自己実現」「説明と同意」,第3主成分として「積極性」「共感・感性」「倫理観・使命感」がそれぞれ抽出された。第3主成分までの累積寄与率は78.1%となった。
【考察】
最高点到達率は,社会性や積極性,協調性,規律性といった社会人の素養として不可欠な情意領域項目で高く,論理性・整合性や自分の考えを他者に伝えること,判断の適切さなどの認知領域,精神運動領域が絡む情意領域項目では低くなった。これは最終学年の総合臨床実習に参加する学生の情意領域の姿をよく表しているように思われる。主成分分析で示された第1~3主成分は,それぞれ「自己発信力」「専門職としての対象者への対応」「他者理解」という言葉で括ることが可能であり,これらはすなわち臨床実習生に求められる,言い換えれば実習指導者が実習生を観る視点であると思われる。「説明と同意」「コミュニケーション力」などには認知領域,精神運動領域も大きく関与するが,内的整合性が高かったことから,この情意領域評価表改訂版は情意領域プロフィールの指標として有効であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
臨床実習生の情意領域を把握するツールとして,情意領域評価改訂版の高い内的整合性と構成概念妥当性を確認できた。
臨床実習生の情意領域評価方法は養成校毎に種々工夫されている。当校では,臨床実習生の行動特性と情意領域を把握する目的で,平成20年度からコンピテンシー評価を取り入れた情意領域評価を採用し,平成24年度には細項目と配点等を見直した改訂版を作成し現在に至っている。コンピテンシーとは「課業や職責を有能に果たすために必要とされる一連の行動パターン(Boam & Sparrow,1992)」などと表現されている。情意領域評価表改訂版を採用した学年の臨床実習カリキュラムが一通り終了した現時点で,評価表各項目で最高点を取る学生の割合と,評価表自体の内的整合性と構成概念妥当性を確認することを目的として本研究を行った。
【方法】
対象は平成26年11月の時点で在学期間4年目の4年次生でかつ総合臨床実習を終了できた学生47人(男性25人,女性22人)とした。情意領域評価表改訂版は[態度]と[基本的技能]の2つの大項目から成り,[態度]は「共感・感性」「実習生・職員との協調性」「自己実現」「社会性・接遇」「責任感」「性格」「規律性」「対象者の尊重」「倫理性・使命感」の中項目9つ,[基本的技能]は「説明と同意」「コミュニケーション力」の中項目2つがそれぞれに配置された。さらに,各中項目は2~5個の細項目に分けられたため,合計33個の細項目で構成されている。細項目は4段階順序尺度(0~3点:点数が高いほどコンピテンシーが優れていることを表す)の選択肢で構成され,各臨床実習の最後に実習指導者により評定された。
データ解析には4年次総合臨床実習終了時のデータを使用した。細項目毎に最高点を付けられた学生の割合を最高点到達率として計算した。また,各中項目の平均値から内的整合性の指標としてクロンバックのアルファ係数(α係数)を算出し,構成概念妥当性を確認するために主成分分析を行った。
【結果】
最高点到達率が75%以上であった細項目は,中項目「社会性・接遇」に含まれる「あいさつ」と「身だしなみ」,中項目「積極性」の「時間厳守」,中項目「性格」の「謙虚さ」,中項目「実習生・職員との協調性」の「実習生・職員との協調性1(人間関係への配慮)」,そして中項目「規律性」の「公私の区別(人間関係)」と「公私の区別(物品)」の全7項目であった。最高点到達率が20%以下の項目は,中項目「倫理性・使命感」の「社会的正義」,中項目「性格」の「判断の適切さ」,中項目「説明と同意」の「情報提供」,「コミュニケーション力」の「自分の考えを伝える」「論理性・整合性」であった。
α係数は0.93(標準化信頼性係数=0.94)となり,除外項目とその他の項目の合計との相関係数は全てα係数よりも小さな値(0.65~0.85)であった。主成分分析の結果,第1主成分として「積極性」「性格」「コミュニケーション力」,第2主成分として「対象者の尊重」「自己実現」「説明と同意」,第3主成分として「積極性」「共感・感性」「倫理観・使命感」がそれぞれ抽出された。第3主成分までの累積寄与率は78.1%となった。
【考察】
最高点到達率は,社会性や積極性,協調性,規律性といった社会人の素養として不可欠な情意領域項目で高く,論理性・整合性や自分の考えを他者に伝えること,判断の適切さなどの認知領域,精神運動領域が絡む情意領域項目では低くなった。これは最終学年の総合臨床実習に参加する学生の情意領域の姿をよく表しているように思われる。主成分分析で示された第1~3主成分は,それぞれ「自己発信力」「専門職としての対象者への対応」「他者理解」という言葉で括ることが可能であり,これらはすなわち臨床実習生に求められる,言い換えれば実習指導者が実習生を観る視点であると思われる。「説明と同意」「コミュニケーション力」などには認知領域,精神運動領域も大きく関与するが,内的整合性が高かったことから,この情意領域評価表改訂版は情意領域プロフィールの指標として有効であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
臨床実習生の情意領域を把握するツールとして,情意領域評価改訂版の高い内的整合性と構成概念妥当性を確認できた。