第50回日本理学療法学術大会

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がん

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0731] 高齢者進行肺がん患者における診断時からの身体機能と骨格筋量の変化について

岡山太郎1, 内藤立暁2, 大橋卓哉3, 増田芳之1, 石井健1, 満田恵1, 森田恵美子1, 岩田英之1, 木村円花5, 盛啓太4, 高橋利明2, 田沼明1 (1.静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科, 2.静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科, 3.静岡県立総合病院リハビリテーション科, 4.静岡県立静岡がんセンター, 5.大阪府立成人病センター)

キーワード:高齢者進行肺がん, シャトルウォーキングテスト, 骨格筋量

【はじめに,目的】
人口高齢化に伴い高齢者肺癌患者は増加しているが,彼らの化学療法中の体組成,身体機能の経時的変化は未だ明らかでない。本研究の目的は進行非小細胞肺癌に対して初回化学療法を受ける高齢者において,初回治療時からの体組成(骨格筋量),歩行能力,筋力の経時的変化について明らかにすることである。
【方法】
本試験は当施設の倫理委員会で承認を受け実施された前向き観察研究である(UMIN000009768)。病理学的に証明された進行非小細胞肺癌(3期,4期又は術後再発)を有し初回化学療法を予定している70歳以上の高齢者のうち,身体機能評価の危険因子(ECOG-PS3以上,活動性の心疾患,筋骨格系ならびに神経系の障害など)を有さない患者を登録した。初回化学療法開始直前(T1),治療開始6週後(T2)および12週間後(T3)で以下の評価項目を測定した:体重(kg),BMI(kg/m2),体脂肪率(%,TANITA BC-118),CTで測定した骨格筋指標(cm2/m2,LSMI,lumbar skeletal muscle mass index),シャトルウォーキングテスト歩行距離(m,ISWD),握力(kg),血清プレアルブミン値(mg/dL),ならびに日常生活動作(点,Barthel index)。
【結果】
2013年1月より同年11月までに予定された30名が登録され,女性11名,男性19名であった。年齢,ECOG-PSの中央値(範囲)はそれぞれ74(70-82)才,1(0-2)でBarthel Indexは全例で100点であった。18名(60.0%)ががん悪液質の国際診断基準(Fearonら,Lancet Oncol., 2011)を満たし,21名(72.4%)がサルコペニアの診断基準を満たした。T1からT3にかけて,体重(平均変化値±標準誤差,-1.1±0.6),BMI(-0.4±0.1),体脂肪率(-2.6±0.6),LSMI(-1.8±0.7),ISWD(-46.4±15.8)に有意な減少(p<0.05,Wilcoxon符号順位検定)が認められたが,血清プレアルブミン値,握力,Barthel indexは変化しなかった。T1におけるISWDと,握力,血清プレアルブミン値に有意な正の相関(Spearman’s rho=0.55[p=0.0022]ならびに0.46[p=0.0112])を認め,T1からT3間のISWDの変化量と,握力の変化量,LSMIの変化量との間にも有意な正の相関(Spearman’s rho=0.41[p=0.0471]ならびに0.52[p=0.0115])を認めた。
【考察】
進行非小細胞肺癌を有する高齢者では診断時にがん悪液質とサルコペニアを高率に認めた。化学療法開始後3ヶ月間に骨格筋量は減少し,筋力と歩行能力も減少した。

【理学療法学研究としての意義】
高齢者進行肺がん患者に対する化学療法開始時の予防的な理学療法介入の必要性を示唆する結果と考えられた。