第50回日本理学療法学術大会

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大会シンポジウム

大会シンポジウム9

街づくりにおける理学療法士の役割―自助・共助の街づくりは人づくり―

2015年6月7日(日) 11:50 〜 13:40 第1会場 (ホールA)

座長:古名丈人(札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科)

[TS-16-3] 地域包括ケアにおける「自助」「互助」「共助」「公助」の課題

松繁卓哉 (国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部)

「地域包括ケア」を,たんに政策誘導としての「脱施設化」と考える向きがある。しかしながら,世界各国の医療・福祉サービスの「地域移行」「包括化」の歴史的変遷をみると,いわゆる「疾病構造の変化」にともなって「医学モデルから生活モデルへ」と転換してきたことの必然的帰結として,地域をベースに「医療と福祉」「フォーマルとインフォーマル」のケア資源の融合が要請されてきたことがわかる。すなわち,これまでに医療・介護のための施設を高度に機能分化させてきた反面,「生活」が保ちがたいものとなってきたことが大きな課題となっているわけである。
日本における地域包括ケアシステムの構想の特徴は,「自助」「互助」「共助」「公助」の4つのシステム構成要素を想定している点にある。一方,ミクロレベルで展開されるケア実践の観察を続けていると,一見独立して存在しているように語られるこれら4つの構成要素が,実際には複雑に絡み合い,重なり合っている状況にあることが見て取れる。「フォーマル・サービス」としての医療・介護の専門職が「公助」を担い,「インフォーマル」なケア資源として近隣の住民同士の支え合いがあるものとイメージされるが,本当にそのような単純化した図式で捉えられるものなのだろうか。
本報告では,国内外の地域包括ケア/community-based integrated careの取り組み事例をふまえながら,「自助」「互助」「共助」「公助」の考え方の多義性について述べていく。そのうえで,たんに医療と福祉という「縦割り」からの脱却にとどまらず,フォーマル/インフォーマルのケア資源の融合に向かっていくためにはどのような課題に向き合わなければならないか,という点について考えていく。