2021年度 人工知能学会全国大会(第35回)

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[2H1-GS-3a] 知識の利用:基礎

2021年6月9日(水) 09:00 〜 10:40 H会場 (GS 会場 3)

座長:坂本 孝文(静岡大学)

10:20 〜 10:40

[2H1-GS-3a-05] 学術は「知覚的知識」とどのように付き合っていくべきか

-「幻覚」から始まる議論の行方-

〇西村 歩1、新井田 統2 (1. 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科、2. 株式会社KDDI総合研究所)

キーワード:知覚的知識、幻覚、選言主義、一人称研究、科学哲学

従来の研究観では、経験を集合させることによって「客観性」を担保していく科学的手続きが重視されてきた。その一方でオートエスノグラフィや一人称研究に見られるように、研究者自身によるフィールドでの活動を通して得られた日常的な知覚経験から得られる経験的な知識としての「知覚的知識(Perceptual knowledge)」を語る研究も見られてきた。しかしここでいう「語り」とは元来主観的かつ文脈依存的なものであることから、研究者の「幻覚」が記述されてしまわないかとする懐疑論も根強く存在する。そこで本稿では研究者自身の経験に基づく「知覚的知識」を報告する研究の意義とは何かについて知識論における「幻覚からの議論」や「選言主義」の立場を踏まえて議論する。その上で知覚的知識に向けられる「幻覚」に由来する過剰な懐疑論を乗り越え,かつ知覚的知識ならではの強みを活用した研究活動が普及していくための条件を提示した。本稿の意義とは、これまで哲学的領域で行われてきた「知覚」に関わる議論について具体的なフィールドを舞台とした研究での適用について議論する一助となることである。

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