第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP30] 7. 抗菌性物質・薬剤耐性-a. 抗菌性物質

[ODP-197] 水環境中での薬剤他生菌の動態

鶴井 実桜,田中 佑佳,小林 由紀 (山口大院・医・保険)


【背景】抗菌薬の不適切使用により薬剤耐性菌は増加しており大きな問題となっている.One Healthの概念に示すようにヒトの健康のためには動物や環境の健全な状態を一体的に守る必要がある.従って環境中の薬剤耐性菌の現状を把握する必要があるが知見は非常に乏しい.
【目的】河川中の薬剤耐性菌を検出し,菌種の相同性検索を行うことを目的とした.
【方法】山口県宇部市を流れる真締川を調査地とした.2020年5~8月にかけて河口より3.1km上流,1.4km上流,河口の3地点から河川水をサンプリングし,水温・pH・電気伝導度・溶存酸素を測定した.河川水を0.2μmフィルターで濾過し,薬剤無添加・ABPC添加・CTX添加・TC添加(濃度は100μg/mL)のMacConkey寒天培地上で,30℃で培養し薬剤耐性菌検出率を求めた.薬剤添加培地から30株を単離培養し薬剤感受性試験を行うと共に,塩基配列を決定し相同性検索した.またDDST法によりESBL産生疑いの菌を検索し,PCR法により遺伝子型を解析した.
【結果】相同性検索の結果,Pseudomonas aeruginosaSerratia marcescensなどが得られた.またCTX-M9型のプライマーを用いたPCR法により,Serratia属の株がESBL産生菌であった.
【考察】MacConkey寒天培地に発育し得るグラム陰性桿菌に限定してなおABPC・CTX・TCに耐性を示す菌が多くみられ,河川中での耐性菌の多さが懸念された.現在は河川水を濾過した0.2μmフィルターからDNAを抽出し,培養できなかった細菌の耐性遺伝子の検出を試みており,遺伝子型や環境要因との関連性について解析中である.