[O115-1] 集中治療室における挿管患者の訴えの特徴
【背景】対象者の訴えを把握することはリハビリテーションの質にも関わる重要な課題である.しかしながら,ICU入室患者のコミュニケーション能力は,挿管やせん妄等により著しく低下する.そのためICUにおける挿管患者の訴えの報告は散見される程度であり,その訴えの特徴は明らかでない. 【目的】ICUに入室した挿管患者の訴えの特徴を明らかにすること【方法】対象は平成26年3月から平成30年8月までにICUに48時間以上在室した挿管患者のうち作業療法の指示があり意思疎通が可能な者とした.除外基準は,脳血管疾患患者, 入院前から意思疎通が困難な者とした.評価項目は,ICU患者の訴えおよびせん妄の評価指標であるCAM-ICUとし,ICU入室期間中に評価した.ICU患者の訴えは,ICU入室期間中に「今,困っていることを教えて下さい」,「今,希望することを教えて下さい」の質問を実施し,自由記述にて返答を得た.自由記述の内容分析は,KHcoder (ver.2)を用いward法による階層的クラスター分析を実施した.また,せん妄の発症と抽出されたクラスターの関連をχ2検定を用いて検討した.【結果】分析対象は39名であり,そのうちICU入室期間中にせん妄を発症した者は,24名(61.5%),しなかった者は15名(38.5%)であった.コミュニケーション方法は,うなずき,首振り13名(33.3%),口パク10名(25.6%),筆談10名(25.6%), 50音表のポインティング4名(10.3%),コミュニケーションボード2名(5.1%)であった.ICU患者の訴えの自由記述は,総抽出語181語であり,最も多く出現したのは「痛い」で8回であった.クラスター分析の結果,挿管患者の訴えは6つのクラスターに分類され,「痛い」,「息が苦しい」,「家に帰りたい」,「力が入らない」,「頭がぼんやりする」,「抑制を取ってほしい」の順に出現頻度が高かった.また,せん妄を発症した者では「抑制を取ってほしい」の訴えが有意に多かった.【結論】ICUの挿管患者の訴えは,痛みが高い頻度で出現し,せん妄を発症した患者では,抑制に関する訴えが有意に多かった.ICUの挿管患者の苦痛を軽減するためには,疼痛の評価と管理が必要と考えられた.また,せん妄の発生率の減少には,抑制によるストレスを軽減する方策が今後の検討課題と考えられた.