第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[O128] 一般演題・口演128
鎮痛・鎮静・せん妄 研究03

2019年3月2日(土) 09:45 〜 10:35 第22会場 (グランドプリンスホテル京都1F ロイヤルルーム)

座長:山室 俊雄(奈良県立医科大学附属病院救命救急センターICU)

[O128-1] 食道手術術後における鎮痛・鎮静プロトコルの検討

津村 真理1, 橋本 晃洋1, 上野 真菜美1, 山福 恵1, 野崎 大地1, 山崎 大輔1, 林 裕子1, 加藤 貴大2, 河本 昌志2 (1.広島大学病院 外科系集中治療室, 2.広島大学病院 麻酔科)

【背景】当院では食道手術の術後は、ほぼ全例が気管挿管のまま外科系集中治療室(SICU)に入室している。SICUでの鎮痛や鎮静は、これまで担当看護師が独自の評価で医師に報告し調節を行ってきた。しかし過鎮静により覚醒遅延を来す症例もあった。そこで今回、食道手術後患者に対する鎮痛・鎮静プロトコルを作成し、それに沿った運用を開始した。尚、このプロトコルは、規定時間に鎮痛・鎮静度を評価し、鎮痛薬・鎮静薬を調節することを概要とする。【目的】プロトコル導入前後での鎮痛・鎮静状況や人工呼吸期間、有害事象の有無等を後方視的に検討し、現在運用しているプロトコルを評価する。【方法】対象は待機的食道亜全摘・胃管再建術後にSICUに入室した患者とした。調査期間はプロトコル非導入群(Pre群)が平成29年6月から平成30年4月、プロトコル導入群(Post群)が平成30年5月から7月までとした。調査項目は、患者背景(年齢、性別、身長、体重、麻酔時間、SICU入室時SOFAスコア)、抜管時間(SICU入室から抜管までの時間)、10hRASS(入室から10時間後のRASS)、終了時RASS(鎮静薬終了直前のRASS)、BPS数(BPSが6点以上となった症例数)、意思疎通時間(離握手や膝立て等の意思疎通が可能となるまでの時間)、PCA回数(抜管前までのPCAボーラス回数)、有害事象の有無(気管チューブや静脈ライン、ドレーン等の自己抜去の有無)とした。結果は平均値±標準偏差もしくは中央値[最小値-最大値]で示した。統計学的検討はカイ二乗検定、対応のないt検定、Mann-Whitney U検定を用い、p<0.05を有意とした。【結果】該当期間中の対象患者はPre群が30名、Post群が9名であった。Pre群とPost群で患者背景に差はなかった。その他の評価項目では、抜管時間(分)はPre群で891±101、Post群で778±154(p=0.01)、10hRASSはPre群で-3[-5--1]、Post群で-2[-3-0](p=0.02)、BPS数はPre群で3例(10%)、Post群で4例(44%)(p=0.02)、意思疎通時間(時)はPre群で12±4、Post群で7±2(p<0.001)であった。終了時RASS、PCA回数、有害事象の有無には両群間で有意差を認めなかった。【結語】本研究の結果、鎮痛・鎮静プロトコルの導入により術後比較的早期から安全に浅鎮静を維持できるようになっており、またより早く抜管できるようになっていた。手術後患者においても鎮痛・鎮静プロトコルは有用と考えられる。