[O128-2] A病院ICUにおけるせん妄有病率と患者の特性及びCAM-ICU,ICDSCとDSMの一致率の比較
【目的】A病院ICUにおけるせん妄有病率と患者特性を明らかにし、医師診断と看護師評価の一致率を比較する。【方法】前向きコホート研究。対象:平成29年5月22日から7月22日にA病院ICUに入室した20歳以上の患者。日本語の理解力が乏しい患者、著しい視覚または聴覚障害によりせん妄評価に必要なコミュニケーションがとれない患者、せん妄評価時の鎮静深度がRASS-3未満の患者、入室後24時間以内に死亡退院した患者を除外とした。【介入方法】看護師はCAM-ICUとICDSCを、精神科医はDSM-5を用いて、対象患者がICUを退出するまで連日せん妄の評価・診断を行った。医師と看護師の評価時間は2時間を超えないようにし、それぞれの評価はブラインド形式で行われ、また看護師の2ツールに対する習熟度について、ICU経験及び看護師経験年数の間に有意差がないことを確認した。統計学的検討はウィルコクソン順位和検定、カイ二乗検定を使用し、必要時フィッシャー正確確率検定を用いた。【結果】A病院ICUのせん妄有病率は49.2%であり、せん妄と診断された患者は、非せん妄患者と比べて高年齢(P=0.016)、外科系疾患患者(P=0.003)、ICU入室時間の延長(P=0.047)、高APACHE2スコア(P=0.05)、フェンタニル使用(P=0.001)で有意に多かった。CAM-ICUの感度は40.0%、特異度96.3%、一致率は78.06%、ICDSCの感度は48.9%、特異度は93.1%、一致率は78.8%だった。また、2ツールとDSM-5の間にはRASS、挿管の有無、鎮静薬の種類による有意差はなかった。1入院あたりでの一致率の比較では、年齢が高く(P=0.005)、ICU入室時間が長く(P=0.014)、APACHEスコアが高く(P=0.008)、フェンタニルを使用している患者(P=0.033)の場合に、有意に低かった。【結論】A病院ICUにおけるせん妄有病率は49.2%であり、せん妄の種類や患者特性は先行研究に準じていた。2ツールとDSM-5の間には、RASS、挿管の有無、鎮静薬の種類による有意差はなく、両ツールはせん妄評価に有効である。しかし、高年齢でICU入室時間が長く、APACHEスコアが高く、フェンタニルを使用している患者の場合では、入院期間を通して観察した場合でも、せん妄を見逃す可能性が高い。