[O14-5] 減張切開部の縫合閉鎖に伴い再増悪を来したsystemic capillary leak syndromeの一症例
【背景】全身性毛細血管漏出症候群(systemic capillary leak syndrome; SCLS)は、反復性に血漿蛋白および水分が血管外に漏出し、血管内濃縮と循環血漿量減少性ショックを来す疾患で、全身の浮腫や腎不全などの症状を引き起こす。発作頻度は、半年から数年間隔という報告が多いが、循環動態の変動が致命的になることもあり、迅速な対応を要する。【目的】今回、我々は、SCLSに伴う四肢コンパートメント症候群に減張切開を行ったが、創閉鎖の際に再発作を来した症例を経験したため、注意すべき身体所見などを振り返りながら検討する【臨床経過】36歳男性。中国在住で、日本に出張中。心機能異常などの指摘はなし。入院前日から鼻汁、喀痰増加などを認め、入院当日には、めまい、嘔気が持続したため、当院 ER外来を受診した。外来診時は、血圧測定不可で、循環血漿量は著明に減少していた。1.5L程の輸液で血圧は上昇し、入院となった。入院3時間後、再度血圧低下を認め、大量輸液を継続しなければ、血圧維持が困難であった。ショックが遷延し、不穏状態となったため、気管挿管を施行した。同時に、四肢の緊満を認め、コンパート症候群を合併し、両側の大腿、下腿の減張切開を行った。血管内濃縮、ショック状態遷延の所見から、SCLSを疑い、ステロイドパルス療法、β2刺激薬吸入、ネオフィリン、免疫グロブリン投与を開始した。入院2日目も多量の輸液を要し、両側前腕に対し、減張切開を施行した。入院4日目より尿量が増加し、一部の創閉鎖を行った。入院5日目に抜管し、入院7日目に残存する創部の創閉鎖を行った。入院8日目には再度血圧低下を認め、輸液増量、少量のカテコラミン投与を要したものの、同日中に改善傾向となった。以降は、循環動態は安定し、テオフィリン内服を継続として、入院19日目に退院となった。【結論】ごく短期間に再度、循環動態の悪化を認め、減張切開部の創閉鎖が原因として疑われるSCLS症例を経験した。コンパートメント症候群はSCLSの合併症としてしばしば報告され、創閉鎖は不可欠な処置であるが、全身状態改善後も再増悪のリスクを念頭に置き、迅速に対応することが必要である。