[O151-5] テキストマイニングによるRapid Response System起動前の看護記録中のバイタルサインの観察の特徴
【目的】病院内での急変に対する,主治医や担当診療科とは異なる医療チームによる介入システムがRapid response system (以下,RRS)である.呼吸,循環,意識の異常といったCPAの前兆を的確に把握し,早期に介入することでCPAへの進展を予防できる可能性がある.本研究では,RRSを起動した患者における発症前の看護記録を後ろ向きに検討し,経時的なバイタルサインに関する観察の特徴を明らかにすることを目的とする.【研究方法】対象は2010年4月から2017年12月の間に当院でRRSが起動した患者とした.データはRRS起動から発症72時間前の看護SOAP記録について電子カルテから収集した.分析は記録をテキストデータとし,テキストマイニングソフトであるKH Coder を用いて,RRS起動から24時間前・24から48時間前・48から72時間前の3カテゴリに分け分析を行った.分析は,単語出現回数と出現回数30回以上の単語を用いて共起ネットワーク分析を行った.さらに,バイタルサインに関連したコーディングルールを作成したのち,コード出現率のバブルプロットによって,カテゴリ間における出現率の差を求めた.本研究は所属施設の看護研究審査委員会の承認を受けており,開示すべき利益相反はない.【結果】RRS発動患者は91症例で,呼吸不全に関連した症例が約半数を占めた.総抽出語数は,51129語であり,総文章数3392文であった.頻出語抽出では,3カテゴリ間ともに,最頻出語は「SPO2」,それに続き「血圧」「心拍数」であった.共起ネットワーク分析では,3カテゴリ間ともに「SPO2」が中心的な単語であり,「酸素」や「低下」が強く共起していた.バイタルサインに関連したバブルプロット分析では,血圧,心拍数,SPO2,意識といった観察項目がRRS起動に近くになるにしたがって有意に増加していた.【結論】3カテゴリ間ともに,最頻出語はSPO2であり,RRS起動前24時間以内においては、観察の頻度が高まっていた.この要因には、呼吸の異常によるRRSの起動が多いことが関連していると考える.一方で,呼吸数や末梢循環不全に関する単語は非常に少なく,冷感・冷汗に関する記載はほぼみられておらず,急変前の前兆に関する知識が,看護師に徹底されていない可能性がある.よって,呼吸数や末梢循環不全等に着目した観察を強化する必要性があると考える.