第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

新生児・小児 症例

[O163] 一般演題・口演163
新生児・小児 症例03

2019年3月3日(日) 10:55 〜 11:35 第17会場 (国立京都国際会館2F Room J)

座長:大崎 真樹(静岡県立こども病院 循環器集中治療科)

[O163-4] 当院におけるPosterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)を呈した13例の臨床像

松田 卓也, 相賀 咲央莉, 林 勇佑, 北村 宏之, 粒良 昌弘, 冨田 健太朗, 佐藤 光則, 川崎 達也 (静岡県立こども病院)

【緒言】Posterior reversible encephalopathy syndrome(以下PRES)は、1996年にHincheyにより、頭痛・意識障害・視力障害・痙攣・精神症状を臨床症状とし、画像検査で後頭葉白質に浮腫性変化を来す可逆性の脳症と報告された。以降、症例報告が集積され、病態・リスク要因(基礎疾患・薬剤)などが明らかにされてきているが、不可逆的な神経学的後遺症を有した例や後頭葉に画像変化を呈さない例など非典型的な例も報告されている。【目的】小児PRESの多彩な臨床像を記述する。【方法】2008年4月1日から2018年7月まで当科で管理した小児PRES症例について、臨床的特徴を後方視的に検討した。【結果】症例は13例、年齡は1歳3ヶ月から17歳(中央値8歳)、経過中に生じた臨床症状は意識障害13例、痙攣9例、頭痛5例、視覚障害2例、高血圧12例であった。全例基礎疾患を有しており、腎移植後4例、急性腎炎3例、頻回再発型ネフローゼ症候群1例、急性リンパ性白血病2例、血球貪食症候群1例、喘息1例であった。発症時にステロイド投与が9例(うち2例でパルス療法)、免疫抑制剤投与が7例で行われており、両者を併用されていた患者は6例であり、抗癌剤が2例に使用されていた。頭部CTは7例で施行され、1例のみ後頭葉に低吸収域を認めた。頭部MRIは12例で施行され、全例FLAIR強調像で異常信号を呈し、10例では後頭葉に画像変化を認めたが、2例では認めず、その他の領域に画像変化を有した。治療は12例に降圧療法、6例に抗痙攣薬投与が行われた。頭蓋内出血・脳梗塞を合併した症例はなく、全例神経学的後遺症なく経過している。【考察】今回の検討では、臨床症状・基礎疾患・原因薬剤・画像所見・治療方法は過去の報告とほぼ同様であった。合併症なく、神経学的予後は良好であった。臓器移植患者・腎疾患・血液疾患で加療中の患者は、免疫抑制剤・ステロイド投与が行われていることが多く、基礎疾患・使用薬剤の2点からハイリスク群と考えられる。【結論】当院で経験したPRESは早期診断・早期治療介入が行われ、全例神経学的予後は良好であった。リスク要因を有する患者では、症状の変化を見逃さず、PRESの発症を念頭に置き診療にあたる必要がある。