[O2-5] 救急外来での処置時の鎮痛鎮静の安全の向上を目指した研究会、コースの設立と多施設前向き観察研究
【背景】救急外来などの手術室以外での処置時の鎮静鎮痛(Procedural sedation and analgesia、以下PSA)は、麻酔科以外の各科医師も日頃から経験する手技である。米国においては安全性が示されているが、本邦救急外来においての実態は不明である。我々は安全なPSAのアイデアと技術を広めることを目的としてセデーション研究会を設立し、手術室外における体系的PSAの評価施行について指導する処置時の鎮痛鎮静コース(以下PSAコース)の運営と、本邦救急外来でのPSAの現状を明らかにするために多施設前向き観察研究(JPSTAR)を実施している。【目的】PSAコースで実施しているアンケート調査および、JPSTARにて収集したデータをもとに、本邦におけるPSAの実態を明らかにし、安全性について検討する。【方法】1)アンケート:当院主幹で実施したPSAコース全9回のコース受講者を対象とした。普段実施しているPSAの詳細について事前アンケートを施行した。2)JPSTAR:対象は登録施設の救急外来受診患者で救急担当医がPSAを施行したものとした。患者、術者側因子および合併症の有無を収集した。【結果】1):対象は177人で回収率は100%であった。卒後年度の中央値は4(IQR3-7)であり専門科は救急科46%と多かった。受講理由としては系統的教育を希望する理由が多かった。実施頻度は週に1回が36%と多かった。PSAの同意は88%で取られていたものの、文書で取得しているものは34%のみであった。実施前の系統的評価は23%でのみで行われていた。2):2017年5月から2018年8月時点で登録数は359例であった。年齢中央値は67歳(IQR46-79)であった。モニタリングは、SpO2モニターは全例使用されていたが、ETCO2モニターは15%でのみで使用されていた。軽度合併症は74例(21%)で認められたが、重篤な合併症は認められなかった。【結論】PSA施行前の系統的評価はまだ十分にされておらず、それに対するニーズは高い。また、モニタリングの方法もまだ統一化されていない。重篤な合併症は認められず本邦においても比較的安全に実施されていると考えられるが、合併症自体は発生しているので、今後は合併症予防のため系統だった準備、評価の啓蒙が必要であり、そのためにもPSAコースを発展させていくべきだと考える。