第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

検査法・モニタリング

[O61] 一般演題・口演61
検査法・モニタリング01

2019年3月1日(金) 14:50 〜 15:40 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:小竹 良文(東邦大学医療センター大橋病院麻酔科)

[O61-3] 重症急性膵炎の初期輸液量の指標としてSVVが有用であった1例

若林 伊織1, 丹保 亜希仁2, 伊丹 秀作1, 佐藤 祐樹1, 高橋 一輝1, 堀越 佑一2, 川田 大輔2, 小北 直宏2, 藤田 智2 (1.旭川医科大学病院 臨床研修センター, 2.旭川医科大学病院 救命救急センター)

【背景】重症急性膵炎では,高度な全身炎症性反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)により全身末梢血管の透過性が亢進するため,血管内脱水を呈し循環障害から臓器障害を来しうる.そのため,中心静脈圧などをモニタリングしながら尿量0.5 mL/kg/hrが確保されるまで初期急速輸液を行うようガイドラインに示されている.重症膵炎の初期における急速輸液は死亡率を低下させることが知られているが,24時間以上行う場合,より厳密な循環動態の評価とモニタリングが必要となる.1回拍出量変化(stroke volume variation;SVV)は1回拍出量の呼吸性変動の変化率を表し,輸液反応性の動的指標となることが知られている.今回,重症急性膵炎の初期輸液においてSVVを指標として輸液管理を行った症例を経験したので報告する.
【臨床経過】60歳台男性.食後に急激な腹痛,嘔吐,下痢が出現,症状の増悪を認めたため当院へ搬送された.BT 36.4℃,BP 74/60 mmHg,HR 93 bpm,RR 32/min,SpO2 97%(酸素カヌラ2L/min), AMY 2919 IU/L,リパーゼ 4687 IU/L,予後因子6点,造影CTグレード3の重症急性膵炎と診断された.第2病日に当科紹介となり,ICUへ入室し持続血液濾過透析(CHDF)を開始した.フロートラック システムを装着し,SVVを指標に初期輸液を継続した.第4病日には腹腔内圧上昇,肺水腫による呼吸不全を認めたため,SVVを指標にCHDFでの除水速度を上げる(300~500 mL/h)ことで改善を認めた.第11病日にCHDFを終了し,第14病日に一般病棟へ転棟した.
【結論】本症例は急性膵炎ガイドラインに従って尿量0.5 mL/kg/hrを確保するよう輸液を行った結果,腹腔内圧上昇,肺水腫をきたした.SVVを指標とした水分管理により,腹腔内圧低下および酸素化改善を認めた.腹腔内圧上昇や腎機能が低下した症例では中心静脈圧や尿量を指標とした輸液管理は困難であり,SVVを指標とした輸液管理が有用となる可能性がある.