第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

栄養

[O72] 一般演題・口演72
栄養01

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:35 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:大槻 穣治(東京慈恵会医科大学附属第三病院救急部)

[O72-4] たんぱく質高配合流動食による栄養管理を行った広範囲熱傷の2例

吉村 有矢1, 関根 康雅1,2, 東山 大士1, 加藤 宏1,3, 礒井 直明1, 秋冨 慎司1, 清住 哲郎1,4, 田中 良弘1, 齋藤 大蔵1,2, 池内 尚司1 (1.防衛医科大学校病院 救急部, 2.防衛医科大学校 防衛医学研究センター 外傷研究部門, 3.南多摩病院 救急科, 4.防衛医科大学校 防衛医学講座)

【背景】広範囲熱傷の栄養管理では、十分なカロリー摂取とともに高たんぱく質栄養が重要であり、International Society for Burn Injuryのガイドラインでは1.5-2.0 g/kg/日のたんぱく質投与が推奨されている。しかし、目標とするたんぱく質投与量の達成は困難が多い。たんぱく質9.2 g/100 kcalの高配合流動食を導入して急性期の栄養管理を行った広範囲熱傷を経験したので報告する。【症例1】51歳男性。体重70 kg。既往歴なし。爆発による熱傷で、Burn Index(BI) は38.5、熱傷面積は45% Total Body Surface Area(TBSA)。受傷当日より人工呼吸管理を要した。第2病日に両下肢の減張切開を施行した。術後より空腸チューブを挿入してたんぱく質高配合流動食の持続投与を開始し、徐々に投与量を増量した。第3病日には1200 kcal(17.1 kcal/kg/日)、たんぱく質110.4 g(1.6 g/kg/日)を投与した。第5病日にデブリードマンならびに人工真皮貼付。第7病日には、医薬品経腸栄養剤を追加して1950 kcal(27.9 kcal/kg/日)、たんぱく質を136.8 g(1.9 g/kg/日)を投与した。第9病日に再手術。第10病日に人工呼吸器を離脱した。第15病日より経口食事摂取を開始し、第21病日のICU退室時の血清アルブミン値は1.4 g/dlであった。【症例2】73歳女性。体重62.6 kg。類天疱瘡と2型糖尿病の既往あり。熱湯による熱傷で、BIは34.9、熱傷面積は69.7% TBSA。受傷当日より人工呼吸管理を要した。第2病日、たんぱく質高配合流動食の持続投与を胃管から開始し、インスリン持続投与を併用した。第3病日には1440 kcal(23.0 kcal/kg/日)、たんぱく質132.5 g(2.1 g/kg/日)へ増量し、空腸へ投与経路を変更した。第4病日、創部感染を合併した。第10病日には、1920 kcal(30 kcal/kg/日)、たんぱく質176.6 g(2.8 g/kg/日)まで増量し、それ以降は同量を継続した。第12病日に感染した左下肢を切断するなど、数回のデブリードマンを実施した。植皮が不可能だったが、良好に上皮化を得た。第66病日のICU退室時、血清アルブミン値は1.9 g/dlであった。【結論】たんぱく質高配合流動食の導入により、高い目標たんぱく質投与量の達成が可能となった。2例とも静脈栄養は併用せずに早期から経腸栄養のみで管理が可能で、高たんぱく質投与による有害事象は生じず、上皮化は良好であった。たんぱく質高配合流動食は、広範囲熱傷の栄養管理において有用な手段となる可能性がある。