第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 研究

[O87] 一般演題・口演87
循環 研究03

2019年3月2日(土) 14:50 〜 15:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:井口 直也(大阪大学大学院医学系研究科生体統御医学講座麻酔・集中治療医学教室)

[O87-3] 当院集中治療室における成人心臓手術患者に対するNO吸入療法の治療効果及び金額的収支からの運用実績検証

井上 隆光1, 佐保 直哉1, 加藤 直道1, 中嶋 辰徳1, 甲斐 真也2, 古賀 寛教2, 安田 則久2, 後藤 孝治2, 北野 敬明2 (1.大分大学医学部附属病院 ME機器センター, 2.大分大学医学部附属病院 集中治療部)

【背景】NO吸入療法 (以下,iNO) は,2015年8月に「心臓手術の周術期における肺高血圧の改善」に対する適応が追加され,当院集中治療室でも2015年10月より一酸化窒素ガス管理システム:アイノフローDSを新たに2台配置となり,臨床工学技士が24時間体制で管理している.今回当院の成人に対するiNOの有効性及び収支差額を検証したので報告する.
【目的】成人心臓手術患者に対するiNOの治療効果及び金額的収支から運用実績を後方視的に検証した.
【方法】2017年の1年間に当院集中治療室でiNOを施行した成人心臓手術周術期肺高血圧患者13例を対象とした.検証項目は患者背景,iNO施行期間,転帰,導入離脱前後の平均肺動脈圧(MPAP),肺血管抵抗(PVR),P/F ratio(P/F),装置使用料金,診療報酬とし,2群比較はウィルコクソン符号順位検定を用いてp<0.05を有意差有りとした.
【結果】施行期間は中央値で92(10-165)時間であり,患者はすべてiNOから離脱しており,その後のICU内死亡率7.6 %(1例),院内死亡率15.4 %(2例)であった.導入前後のMPAPの中央値で27.5(23-46)mmHgから25(17-39)mmHg,PVRで200.3(112.1-504.7)dynes/秒/cm5から141.3(19.4-388.2)dynes/秒/cm5と有意な改善を認め,離脱後の値に悪化は認められず,リバウンドなく離脱可能であった.アイノフローDSの借用料金及び使用料金は高額であるが,検討期間内の総施行時間は1105時間で当院借用装置全ての料金は無償となり,使用支出が収入を超えることはなかった.
【結語】心臓手術後成人患者の肺高血圧に対しiNOを安全に施行し,離脱することができた.iNO装置の販売はないが,使用料金にNOガス料金や回路などの材料費も含まれており,規定使用時間を超えれば,施設側の負担はなく,収益を得ることが可能であった.