第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 症例

[O89] 一般演題・口演89
循環 症例04

2019年3月2日(土) 16:50 〜 17:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:澤野 宏隆(大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター)

[O89-7] ホルター心電計を用いた幅広い年齢層における健常者の心拍変動解析パラメーターの特徴

橋本 賢一1, 高瀬 凡平1, 眞崎 暢之1, 笠巻 祐二2 (1.防衛医科大学校 集中治療部, 2.金沢医科大学校 氷見市民病院 地域医療学)

【目的】ホルター心電図による心拍変動解析 (HRV) による自律神経活動の評価は,心疾患患者における心室細動や心室頻拍などの不整脈による心臓突然死のリスク層別化因子として有用性が報告されている. また循環器疾患及び集中治療領域においてICU,CCUに入室する患者の予後予測因子として, HRVの有用性に関する報告が散見される. これまでに60歳以下の健常者でのHRVの正常値は報告されているものの, 60歳以上における多数症例の報告は少ない. 本研究の目的は20歳代から80歳代まで幅広い年齢層での健常者でのHRVの特徴について性差を含めて検討することである.【方法】対象は健常ボランティア247名(男性117名、平均年齢49.4±18.4歳). HRVのパラメーターとして時系列解析で得られる SDNN (24時間のNN間隔 [心拍のRR間隔]の標準偏差 [ms]), RMSSD (隣り合うNN間隔の差の2乗の和の平均の平方根[ms]), pNN50 (すべてのNN間隔の差が50ms以上異なるNN間隔の全体に対する比率[%]) と周波数解析で得られる HFnu (高周波領域のパワー 0.15-0.4 Hz [ms 2]), LF/HF (低周波領域のパワー 0.04-0.15 Hz [ms2]と高周波領域のパワーの比) の5項目について解析した. 20歳~39歳=(A), 40歳~59歳=(B), 60歳~74歳=(C) また、75歳―89歳=(D)とした.【成績】時間領域解析でのすべてのHRVパラメーターは年齢が上がるとともに有意に低下した (中央値[四分位範囲]; SDNN, (A): 154.8 [131.4, 184.6], (B): 137.5 [117.0, 160.6], (C): 133.5 [113.3, 151.4], (D), 125.7 [96.7, 153.2], p<0.001; RMSSD, (A): 35.1 [26.3, 50.1], (B): 25.7 [19.5, 32.8], (C): 22.8 [17.2, 29.7], (D), 22.0 [14.6, 28.9], p<0.001; pNN50: (A): 11.1 [4.8, 20.6], (B):4.5 [1.6, 9.0], (C): 2.4 [0.8, 5.6], (D), 2.3 [0.6, 6.0], p<0.001.).周波数解析においてはLF/HFは(B)の年齢層が最も高値で, HFnuは年齢が上昇するとともに有意に低下した.60歳未満の年齢層ではLF/HFは女性に比して男性で有意に高値であった(p<0.005). 60歳以上では時間領域解析のパラメーターであるSDNN, RMSSD,pNN50すべてで有意に女性が有意に高値であった(p<0.005).【結論】健常者では加齢に伴い自律神経活動が変化し, 特に副交感神経活動指標は高齢になるに従い低下した. また, HRVのパラメーターは年齢層によって性差を認めた. 今後加齢に伴う変化を考慮した幅広い年齢毎の正常値の検討が望まれる.