第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 症例

[O89] 一般演題・口演89
循環 症例04

2019年3月2日(土) 16:50 〜 17:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:澤野 宏隆(大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター)

[O89-6] 卵円孔開存患者における適切な人工呼吸器設定を経食道エコーを用いて行った1症例

多羅尾 健太郎, 孫 慶淑 (千葉大学医学部附属病院 麻酔・疼痛・緩和医療科)

<背景>卵円孔開存(PFO)は剖検例の27%に認められ、奇異性塞栓の原因となっている。PFOのシャントの向きは心房圧の変化によって容易に変化し、特に呼気終末陽圧の負荷によって右左シャントになったと報告されている。またPFOは奇異性塞栓の原因のみならず、継続した右左シャントによって酸素化の低下をきたす。急性呼吸不全患者でPFO合併例では酸素化能の低下によりICU滞在期間が延長したとも報告され、人工呼吸器管理をする上でPFOの合併の有無は非常に重要な因子となりうる。<臨床経過>32歳男性、交通事故による多発外傷患者で左大腿骨開放骨折の手術時に術中に酸素化能悪化が見られ脂肪塞栓が疑われた。また術後、脳梗塞を合併し脂肪塞栓による奇異性塞栓と診断された。卵円孔開存(PFO)による奇異性塞栓であると判断し、大腿骨骨折に対する再整復術時に経食道エコーの所見によってPFOの診断と適切な人工呼吸器管理を決定した。呼気終末陽圧(PEEP)を0、10cmH2Oと変化させ右左シャントが発生するか確認した。経食道エコーを用いることで適切な胸腔内圧を維持することができ、奇異性塞栓の再発を予防することができた。<結論>今までの報告ではPEEPを上昇させることによって右左シャントが増えるとされている。またPFO診断時にもValsalva法を用いることで右左シャントを認める症例を多く経験する。しかし本症例ではPEEPを上昇させることで右左シャントが消失し胸腔内圧変化とは関連を認めなかった。胸腔内圧上昇によって右左シャントが増加する現象は個々の症例で異なる可能性が示唆された。PFO合併患者の人工呼吸器管理を行う際は、シャントの向きにも注意が必要であり、酸素化能悪化や奇異性塞栓予防のためには症例ごとに経食道エコーを用いて適正なPEEP値や呼吸器設定を行うべきかもしれない。