[O89-5] クローン病を合併した高安病による大動脈弁逆流症に対してV-AV ECMOを用いて術後管理を行った一例
高安病は大動脈およびその基幹動脈等に生じる全身性の血管炎で、潰瘍性大腸炎を併発することはよく知られている。しかし、機序は不明とされているが、クローン病患者に高安病を併発するという報告は散見されている。今回、小腸型クローン病の診断で当院に通院中の患者が、高安病によると思われる重症大動脈弁逆流症を原因とした急性心不全で入院し、大動脈弁置換術を行い、術後にVAV ECMOを用いて術後管理を行った症例を経験したので報告する。症例は55歳の女性。10年程前より小腸型クローン病の診断で当院消化器センターに通院中であった。最終の心臓超音波検査は7年前で、その際は特記すべき所見を認めていなかった。発熱、呼吸困難感を自覚し近医受診したところ、うっ血性心不全を呈していたため当院に救急搬送された。心臓超音波検査で全周性の壁運動低下と、重症大動脈弁逆流を認めた。また、胸部CT検査で浸潤影と上行大動脈瘤の存在も認めた。感染契機の急性心不全の状態と診断し当院循環器センターに入院された。呼吸状態の悪化を認めたため入院2日目に気管挿管し、人工呼吸器管理とした。大動脈弁置換術が必要と判断し、入院3日目にBentall術を施行した。完全な止血は困難で、また心臓の浮腫も認めたため胸骨閉鎖せずに帰室した。人工心肺離脱後に酸素化を維持することができず、VAV ECMO、IABP、CHDFを用いて術後管理を開始した。循環動態は維持できるようになったため、術後3日目にVA ECMOは離脱しVV ECMOでの管理に移行した。CHDFで除水を行って、術後5日目に閉胸した。その際に胸腔内の血腫も除去したところ、その後より換気量の増大を認めたことからVV ECMOのウィニングを開始し術後11日目にVV ECMOを離脱した。一般的にクローン病と高安病は共に稀な疾患であり、両疾患を併発する頻度は統計上は100億人に1人とされている。しかし、実臨床においてはクローン病にはより高頻度に高安病を合併しているとの報告も見受けられ、また同様に高安病にもクローン病を併発することがあると報告されている。高安病にクローン病を合併する症例は、より若年発症で、全身性の症候が多いと報告されている。クローン病患者においては稀であるが本症例のような経過をたどる例もあり、定期的な心臓超音波検査を行い弁膜症の早期発見に努めることが重要と思われたため報告する。