第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 症例

[O9] 一般演題・口演9
呼吸 症例02

2019年3月1日(金) 10:50 〜 11:50 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:中澤 弘一(東京医科大学病院)

[O9-2] 集中治療室での気管支鏡下肺胞洗浄で救命し得た肺胞蛋白症

金 成浩1, 柏 庸三1, 鮫島 友美子2, 金井 友宏2, 野田 成美2, 清水 一範2, 西田 拓司2, 馬越 泰生2, 森下 裕2, 松岡 洋人2 (1.大阪はびきの医療センター 集中治療科, 2.大阪はびきの医療センター 呼吸器内科)

【背景】肺胞蛋白症(PAP)はサーファクタントの障害により肺胞腔内や末梢気道内にサーファクタント由来物質である好酸性の蛋白様物質の異常貯留を来す希少疾患である. 発症機序は未だ不明で,自己免疫性PAPにはGM-CSFの吸入療法が試みられる一方,続発性PAPでは基礎疾患の治療,洗浄療法が必要となる.全肺洗浄は,手術室での片肺換気下で行われるため施設条件が限られており,また人工呼吸管理を要する重度の低酸素血症を要する場合には,体外式膜型人工肺の呼吸・循環補助を考慮する必要がある.本症例は,重度の低酸素血症を呈する肺胞蛋白症で,ベッドサイドでの気管支鏡下区域洗浄を行い救命し得たため報告する.【臨床経過】症例は77歳男性で,主訴は呼吸困難であった.来院5ヶ月前から労作時の呼吸困難が出現し,徐々に増悪したため前医救命センターに搬送となった.リザーバーマスク酸素10L/分を要する低酸素血症を伴いCTで右肺優位のすりガラス陰影を認めた.診断目的に気管支肺胞洗浄(BAL)が行われ米のとぎ汁様の回収液から肺胞蛋白症と診断した.細菌学検査やその他血清学的異常所見も認めず,抗GM-CSF抗体も陰性であることから原因不明の続発性肺胞蛋白症と考えた.診断後,治療目的に当院集中治療科に転院搬送となった.当院転送後に,低酸素血症が悪化したため気管挿管の上で人工呼吸器管理となった. P/F ratio 140の低酸素血症の状態で,当施設においても体外人工心肺併用下での全肺洗浄は行えない状況であり,集中治療室でのベッドサイド下気管支鏡下区域洗浄を行う方針となった.BALと同様の処置方法で1回あたり生理食塩水1000mlで右肺の区域毎の部分肺洗浄を計12回行った.胸部レントゲン上のすりガラス陰影は徐々に改善し,第21病日に抜管となった.抜管後,両側声帯固定となり再挿管・気管切開術が施行されたもののその後の呼吸状態は安定し,気管切開孔も閉鎖となった.第128病日に歩行可能な状態で自宅退院となった.【結論】重症度の高い肺胞蛋白症に対して,全肺洗浄を行うことは高度な設備が必要とされる.ベッドサイドでの気管支鏡下部分肺胞洗浄は,比較的簡便で標準的な集中治療室であれば可能である.