第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

補助循環 症例

[O98] 一般演題・口演98
補助循環 症例03

2019年3月2日(土) 16:10 〜 17:00 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:大平 順之(兵庫医科大学病院 臨床工学部)

[O98-4] 遠心ポンプ回転数に基づいた揚程推定式を用いて脱血圧の連続推定を行ったV-A ECMOの1症例

佐々木 慎理1,2, 小野 淳一2,3, 松本 卓也3, 小笠原 康夫2,3, 望月 精一2,3 (1.川崎医科大学附属病院 MEセンター, 2.川崎医療福祉大学 医療技術学研究科 臨床工学専攻, 3.川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床工学科)

【背景】
ECMO施行中は,安定した送血流量の確保が重要となるが,目標とする送血流量が得られない症例をしばしば経験する.その原因を特定し適切に対処するためには,送血圧とともに脱血圧も測定することが望ましいが,脱血圧の測定は空気誤入の危険性を伴うため,専用のデバイスを用いない限り連続測定が困難である.そこで,我々は基礎実験系を用いた先行研究で,遠心ポンプ出口圧と遠心ポンプ回転数から遠心ポンプ入口圧を推定する手法を開発した.
今回,V-A ECMOを施行した患者1名を対象に,これまでに開発した手法を用いて遠心ポンプ入口圧の連続推定を行い,その有用性を検討したので報告する.
【臨床経過】
51歳女性,ACSにて緊急PCI中にCPAとなり,IABPとV-A ECMO導入となった.ECMO装置にはSP-200(テルモ),回路にはキャピオックスLX回路(圧ライン付;テルモ)を用い,送血圧として遠心ポンプ出口圧を測定した.CCU帰室後,基礎実験にて事前に得られた回転数と揚程の関係式を入力したデータマネジメントシステム(DMS;テルモ)に,SP-200から出力された回転数,圧力のデータを取り込み,揚程と入口圧を連続推定した.治療中はDMSにて推定揚程と推定入口圧の連続モニタリングを行い,第3病日に無事ECMO離脱となった.
離脱後にDMSからデータを取り出し,解析したところ,遠心ポンプ回転数や送血圧などの変化によって,入口圧もそれに応じて変化していることが確認された.また,実際に測定した入口圧の50分間分のデータを用いて,入口圧の推定精度を確認したところ,ばらつきが大きく,低い精度しか得られなかった.この理由として,IABP併用にて拍動成分がある事に対して,DMSのサンプリング間隔が1秒であり,2つの圧力チャンネルのデータ取込みタイミングが異なることが原因と考え,各データを10秒間の移動平均処理したところ,入口圧の推定値と実測値の関係は,y=0.95x-1.09(r2=0.98)となり,高い推定精度が得られた.
【結論】我々が開発した遠心ポンプ入口圧の推定法は,臨床使用条件下においても高い精度で推定可能であることが明らかとなった.この推定法で得た入口圧をECMO脱血圧モニタリングとして使用することで,送血流量低下時の原因特定に寄与することが示唆された.