[P102-4] 術後ICU入室患者における発熱に影響を及ぼす因子の検討
背景:全身麻酔下に手術を受けた患者が、術後にしばしば発熱することは周知の事実である。発熱は手術侵襲に伴う全身性の炎症反応が主な原因であると考えられているが、他の関連因子の詳細は明らかではない。目的:ICU入室術後患者の発熱に関連する因子を明らかにする。方法: 2015年1月1日から2017年12月31日の間で予定手術後にICUに入室した成人患者を後ろ向きに検討した。発熱の定義を発熱評価ガイドラインに準じ、38.3℃以上とした。術前に血液培養検査が陽性の患者は除外した。ICU入室時の体温が38.3℃未満で、その後24時間以内に38.3℃以上に上昇した患者を発熱ありとし、その患者の体温変化(℃)を目的変数とした。説明変数は、年齢、BMI、手術時間(min)、出血量(ml)、硬膜外麻酔の有無、人工心肺装置使用の有無、術中輸血の有無、ICU入室後血液培養検査の実施・未実施・陽性・陰性、APACHE II Score、ICU入室後鎮静剤使用の有無とした。ステップワイズ法を用いた重回帰分析を行い、回帰式の予測に有効な変数を決定した。結果:統計解析にはJMP Pro 12.2.0(SAS社)を用いた。対象期間中に術後ICUへ入室した患者は822名であった。入室後1時間以内に体温測定を実施された患者は793名で、そのうち24時間以内に発熱した患者は147名であった。発熱した患者に対して重回帰分析を実施した結果、有意な変数として選択された因子は、BMI低値(p=0.157)、硬膜外麻酔の併用なし(p=0.108)、出血量の低量(p=0.001)、APACHE II Score高値(p=0.0006)、デクスメデトミジンの使用(p=0.157)であった。一方で有意な変数とならなかった因子は、年齢(p=0.922)、手術時間(p=0.917)、人工心肺装置の使用の有無(p=0.945)、ICU入室後血液培養検査の実施・未実施・陽性・陰性(p=0.341)であった。説明変数によって目的変数を説明できる可能性を表す寄与率(自由度調整済み寄与率)は16.5%であった。結語:術後24時間以内の発熱に影響を及ぼす因子は、BMI、硬膜外麻酔、出血量、APACHE II Score、デクスメデトミジンの使用であった。