[P14-2] 肺切除術後の後天性気管支食道瘻に重症呼吸促迫症候群を合併した1症例
【背景】後天性気管支食道瘻に重症肺炎、重症呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome, ARDS)を合併すると致命的とされている。その原因として、気管支食道瘻により十分な陽圧換気が困難となる事が一因と考えられる。今回我々は、後天性気管支食道瘻にダブルルーメン挿管チューブ(double-lumen tube, DLT)とsengstaken-blakemore tube(SBチューブ)を使用して安全に呼吸管理を行えた1症例を経験したので報告する。【臨床経過】71歳男性。X年5月30日に右肺癌(小細胞癌)に対して完全鏡視下右下葉切除+縦隔リンパ節郭清術を施行され、術後は問題なく自宅退院となっていた。同年6月21日の夕方、入浴後から倦怠感、咳嗽、呼吸苦が出現し、前医に救急搬送となった。頻呼吸、SpO2低下を認めた為、挿管、人工呼吸が開始され、急性呼吸不全の原因精査及び全身管理目的に当院救命救急センターへ救急搬送となった。当院搬入後の胸部CT検査で、左主気管支(気管分岐部から3cm)に気管支食道瘻、右肺野に誤嚥性肺炎、ARDSの所見を認めた。気管支食道瘻の原因として、肺癌手術時の気管分岐下郭清時の操作が考えられた。人工呼吸器使用下で食道から、胃や口腔内へのairリークが多い為、シングルからDLTへ入れ替え、気管支カフで瘻孔を塞ぐ状態でチューブ位置を固定し、十分な陽圧換気が可能となった。入院後4日目に気管支ステントを留置したが、その際はDLTをシングルルーメン挿管チューブに入れ替え、経鼻的に挿入したSBチューブの食道バルーンで食道側の瘻孔を塞ぐ状態に固定する事で、十分な陽圧換気を維持し、安全に処置を行う事が出来た。その後呼吸状態も安定し、人工呼吸器を離脱した状態で入院後14日目にICUを退室となった。【結論】肺切除術後の後天性気管支食道瘻にARDSを合併した症例に対して、集学的治療により救命できた1例を経験した。後天性気管支食道瘻に陽圧換気を行う場合、気管支ステント留置までの呼吸管理としてDLTの使用や、DLTからシングルルーメン挿管チューブに入れ替える際にSBチューブの使用も選択肢の1つと考えられる。