[P23-3] 呼吸停止で来院した、出血発症頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻の1症例
【背景】頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻は本邦の全国調査で年間10万人当たり約0.3人程度の発症率の比較的まれな疾患である。今回、我々は呼吸停止で搬送された、特異なシャント形態を有する確頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻を経験したため、これを報告する。【臨床経過】症例は60歳代男性。意識障害、呼吸停止で救急搬送された。意識障害の原因精査目的に施行した頭部CTで延髄出血、くも膜下出血、第4脳室内出血を認めた。出血源検索目的に施行した脳血管造影にて右頸髄C2根動脈及び前脊髄動脈を流入動脈とし、頸髄及び脳幹前面を上行する拡張した流出静脈を認め、頭蓋頸椎移行部動静脈瘻と診断した。頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻に対する治療の一般的な第一選択は外科的な静脈遮断術であるが、本症例は呼吸状態が悪く、また頸髄C2根動脈からのアプローチが可能と判断し、低侵襲な血管内手術(経動脈的塞栓術)を選択した。しかし、静脈側まで塞栓物質が到達せず、不完全治療に終わり、外科的加療を追加した。【結論】特異なシャント形態を有する出血発症頭蓋頸椎移行部動静脈瘻の一例を経験した。本症例では頭蓋内出血は比較的軽度であったが、出血部位は延髄~上位頸髄であり、呼吸中枢に強く影響し、重篤な意識障害、呼吸不全に至ったと推測された。頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻は、近年pial arteryである前脊髄動脈が関与する症例が多数あると報告され、他の硬膜動静脈瘻とは異なる形態を有すると言われている。本症例も頸髄C2根動脈と前脊髄動脈が主たる流入動脈であり、頸髄C2根動脈からのアプローチのみでは不完全治療に終わった。一般的に開頭術で95%以上の治癒率があるが、血管内手術では70%程度と報告されており、その成功率は手術手技のみならず、そのシャント形態も関係していると考えられる。術前の詳細な血管構築を把握することにより適切な治療を選択することにより良好な治療結果を得られると考えられる。