[P27-3] 劇症分娩型溶連菌感染症の1症例
【背景】妊婦に起こる劇症型溶連菌感染症のリスクは非妊婦の20倍との報告がある。さらにショックをきたすと死亡率は60%と高率である。溶連菌感染症は妊婦では咽頭痛や上気道症状、産後早期では腹痛の症状が多く、いずれも非特異的な症状であるために治療の遅れが致命的となる。このたび感染性流産をきたし、集中治療を行ったが救命できなかった劇症型溶連菌感染症の一例を経験したので報告する。【臨床経過】45歳女性、妊娠20週4日。来院5日前から咽頭痛と咳嗽が出現し、前日からは腹痛を自覚していた。来院当日の朝に不正性器出血があったためかかりつけの産科を受診した。受診直後に破水し、分娩となったが死産となり、発熱と緑色の悪露が認められた。セフォチアムが投与されたが短時間のうちにショック状態に陥り、当院へ集中治療目的に転院となった。当院来院時、意識清明、呼吸数30/分、心拍数130/分、血圧111/84mmHg、SpO2 90%(リザーバーマスク10L/分)、体温(腋窩)39.8℃、顔面と体幹に多型紅斑を認めた。採血では白血球減少と高炎症反応、腎障害を認め、急性期DICスコアは5点であった。十分な輸液を行っても平均血圧65mmHgを維持することができなくなったためノルアドレナリンの持続投与を開始した。さらに両側肺野の透過性低下と血痰を認め、人工呼吸器管理としICUへ入室となった。敗血症性ショックを念頭に初期治療としてMEPMとVCMを投与した。さらに妊婦の咽頭痛と紅斑から溶連菌感染症を疑い、咽頭ぬぐい液による溶連菌迅速検査を施行したところ陽性であった。短時間のうちに全身の紫斑と水泡形成が出現したため、劇症型溶連菌感染症の診断でABPCとCLDMも追加投与した。ICU入室後、アドレナリンとバソプレシンの持続投与、CHDF、V-V ECMOなど集学的な集中治療を行ったが、状態の改善はみられずにアシドーシスの進行により第3病日に死亡した。【結論】妊娠中もしくは産後早期における非特異的症状の感染症として、溶連菌感染症を常に念頭に置き、早期のペニシリン投与が行われるべきである。