第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

循環 症例

[P36] 一般演題・ポスター36
循環 症例04

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:橋場 英二(弘前大学医学部附属病院集中治療部)

[P36-5] 突然の胸痛で発症した大動脈弁位生体弁不全の一例

横手 淳, 横山 幸房, 山田 真生, 黒田 太陽, 柚原 悟史, 長谷川 広樹 (大垣市民病院 心臓血管外科)

【背景】生体弁による大動脈弁位人工弁置換は、高齢者の重症大動脈弁狭窄症に対する治療の第一選択である。生体弁の耐久性が改善され、中長期にわたる経過については概ね満足できるものとなっている。しかし、人工弁弁尖の石灰化に伴い再狭窄をきたし、再弁置換を余儀なくされることもある。この場合、徐々に進行する再狭窄に対して経過を見た上で手術を予定できる。一方で、生体弁構造が破壊されることで急性閉鎖不全を生じ、急速に血行動態が保てなくなり、速やかな治療介入を要することもある。今回我々は、明らかな誘引なく生体弁弁尖に亀裂が入り、突然の胸痛で発症した急性大動脈弁位生体弁閉鎖不全に対し、再弁置換を行い救命し得た一例を経験したので報告する。【臨床経過】75歳、女性。4年前に大動脈弁狭窄症・上行大動脈拡張に対して生体弁による大動脈弁位人工弁置換並びに上行大動脈人工血管置換術、3年6か月前に持続性心房細動に対してカテーテルアブレーションの手術歴あり。昼頃に突然の胸痛を自覚し、近医を受診、当院紹介搬送となった。心電図で広範囲誘導にST低下を認め、急性冠動脈症候群を疑い、冠動脈造影検査を行った。しかし、冠動脈に有意狭窄病変は認めなかった。挿管後、経食道心臓超音波検査を行うと、偏心性の高度大動脈弁閉鎖不全を認め、人工弁不全と診断、機械弁による再弁置換を行った。人工弁弁尖3枚の内一枚が、ステントポストに沿って切れ、これが左室側に落ち込み機能不全を生じていた。生体弁を可及的に除去し、機械弁を縫着した。体外循環からの離脱困難となり、IABP、PCPSを導入して手術を終了した。第4病日にPCPSを離脱、第7病日に胸骨閉鎖、第10病日にIABPを抜去した。人工呼吸管理からの離脱等に時間を要したが、第93病日にリハビリ継続のため転院となった。【結論】人工弁不全による急性大動脈弁閉鎖不全は、拡張期血圧の急激な低下に伴い、急性心不全症状のみならず、当症例のように狭心症状を呈することも念頭に入れ、診断・治療に当たる必要がある。