[P41-7] DKAおよび敗血症性ショック後にICUAWを発症した多腺性自己免疫症候群2型患者の1症例
【背景】ICU acquired weakness(ICUAW)は近年提唱された疾患概念でICU退室後の予後不良因子として注目を集めている。一方、多腺性自己免疫症候群2型(APS-2型)は副腎皮質機能低下、甲状腺疾患、1型糖尿病などで構成され、内分泌疾患の他にもセリアック病など多彩な疾患を合併する。今回、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に敗血症性ショックを併発したAPS-2型患者に対して集学的治療を行い救命したが、その後ICUAWを発症し対応に難渋した症例を経験した。【臨床経過】患者は43歳、女性。APS-2型に対して当院外来治療中、インスリンの自己中断を契機としてDKAを発症したため当院入院。輸液・インスリン投与などでDKAは改善したが、敗血症性ショックを併発したためICUに入室となる。抗DIC薬投与、持続血液浄化療法、人工呼吸器管理など集学的治療を行い、病状は改善したが、人工呼吸器離脱困難や高度な四肢筋力低下などを認め遷延した。神経内科的検索を含む精査の結果、ICUAW(CIP>CIM)が原因として最も考えられた。セリアック病との診断には至らなかったものの発症前より慢性的な低P血症を認めていたことから消化管吸収不良を呈する病態を有していた可能性が高く、そのことがICUAWを悪化させたと推測された。また発症前後にステロイド投与を行う必要があったこともICUAW発症要因の一つと考えられた。呼吸器離脱が当面困難と予想されたため気管切開を行い、リハビリやNSTによる栄養管理なども導入し、入院から約2か月後に一般病棟へ転棟。依然人工呼吸器管理が必要な状況であるが、呼吸器のウィーニングを徐々に進められており、四肢筋力も緩徐に回復傾向にある。【結論】APS-2型患者では、その病態背景からICU収容を要するような重症疾患を発症する可能性が比較的高いと考えられるが、その場合、ICUAWの発症・重症化するリスクが高くなると推測される。早期からの集学的アプローチがより重要になると考えられ、この点で本症例報告は示唆に富むものであると思われる。