第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

栄養

[P57] 一般演題・ポスター57
栄養

2019年3月2日(土) 11:00 〜 12:00 ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:東別府 直紀(神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科・NST)

[P57-4] オピオイド持続静脈注射使用中の排便コントロールにおけるナルデメジンの検討

山内 佑允, 青木 優佑, 濱田 一央, 山添 大輝, 小出 明里, 山内 浩揮, 三浦 政直 (刈谷豊田総合病院 麻酔科・救急集中治療部)

【背景】重症患者においては、早期の経腸栄養投与が望ましいが、排便コントロールにはしばしば難渋する。その要因の一つとして、患者鎮静に用いられるフェンタニルの関与は十分に考えられる。一方、ナルデメジンはオピオイド誘発性便秘症(OIC)改善薬として2017年3月に承認された。本薬物は、緩和領域における有用性の報告は散見されるが、集中治療領域における静注オピオイド使用患者に対する有効性に関する報告はほとんどない。【目的】本研究では、静注オピオイドを使用している重症患者においてナルデメジン服用による鎮痛および排便への影響を明らかにする目的で後方視的に検討した。【方法】2018年1月から6月を対象期間とした。ICUに入室し鎮痛コントロールのためフェンタニル静注を要し、通常治療では排便調節が困難であった患者を対象とした。18歳未満の症例および腸管利用に制限のある患者は除外した。ナルデメジンは1回0.2mgを1日1回経口投与とし、観察項目はフェンタニル使用量、CPOT、排便までの時間、ブリストルスケールとした。また、フェンタニル持続投与量はCPOT=2を目標としたスケールに則り適宜増減させた。フェンタニル使用量は介入時点で平均0.52μg/kg/h (最小- 最大 0.4- 0.73μg/kg/h) 、総投与量は平均7734μg (900-12610μg)であった。【結果】対象となった患者は6例であった。ナルデメジン投与前の便秘日数は平均8.33日(2 - 12日)、ナルデメジン投与から排便までの時間は平均22.75時間(6.5 - 44時間)であった。下痢便(ブリストルスケール6-7)は5例で認めた。ナルデメジン投与後のフェンタニル投与量に変化はなかった。【結論】ICU患者における便秘症は日常的に起こっている。特に、OICはオピオイド使用中患者の約40-80%に認められ、単に排便が得られないというだけでなく、悪心・嘔吐の原因となったり、内服薬物の吸収を阻害したりするなど患者管理が不安定になる重篤な副作用である。その要因は複合的ではあるが、本研究のナルデメジン反応性から、静注オピオイドによる影響も小さくないと推定された。しかし、症例数が少なく統計学的根拠は得られていない。今後さらなる症例の集積が必要である。