[P6-4] 敗血症/重症血流感染患者を対象とした迅速多項目PCR検査の臨床的有用性に関する非介入研究
【背景】敗血症は致死率の高い疾患の一つであり,より早期から適切な抗菌薬投与が求められる.しかし通常の培養検査で原因微生物が判明するまでは時間を要し,適切な治療の開始が遅れる場合もある.【目的】敗血症/重症血流感染症の患者は迅速マルチプレックスPCR検査導入により,より早い段階の適正抗菌薬投与開始,又は広域スペクトラム抗菌薬から狭域スペクトラム抗菌薬への変更(デエスカレーション)につながるのか検討する.【方法】広島大学病院に入院した患者の中で血液培養陽性となった62例に通常の培養検査に加えてFilmArray検査を使用した.非介入研究のためFilmArray検査結果は診療医に報告されず,患者の治療が終わった後に、FilmArrayの結果と従来検査結果を比較し、患者の治療を改善する方法があったか検討した.【結果】62例のうち,血液培養結果とFilmArray結果の一致率は92%だった.血液培養結果が陽性までの平均時間は18.4時間であり,結果が一致した症例での血液培養の感受性判明までの時間は平均+30.2時間であった.培養結果判明まで不適切な治療は10.4%であり,FilmArray結果により早期の適切治療開始が期待できた.ブドウ球菌陽性例は17例,うちメチシリン耐性株は11例であった.FilmArray結果で抗MRSA薬の早期開始ができた症例が5例,また早期中止ができた症例は6例だった.【結論】FilmArray検査を用いることより従来の検査方法より早く適切な抗菌薬投与を行うことができる可能性が示唆された.とくにグラム陽性球菌感染症での抗MRSA薬の適正治療が期待される.