[P6-6] 当院ICUにおける血流感染症症例の検討
【はじめに】ICUでの血流感染症(BSI)は発症すると予後に影響を与える因子となる。自施設での微生物の分離状況やその特徴を調査することは、治療を開始する際の重要な情報になると考え、当院ICUでのBSIの抗菌薬治療の現状を調査した。【方法】当院ICUでは2009年10月から2018年8月までの約9年間に1175回の血液培養を施行した。培養で得られた微生物の種類、BSIの原因、血液培養採血日の抗菌薬治療の有無と、後に分離された微生物に対する投与された抗菌薬の感受性適合率、採血日からの28日後死亡率との関連を調査した。【結果】血液培養が陽性となったのは163例であった。継続して同じ菌が分離されている重複を除くと130例で分離菌は、腸球菌22例(15%)、カンジダ属21例(14%)、黄色ブドウ球菌14例(10%)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクター属それぞれ13例(9%)であった。BSIの原因はカテーテル関連血流感染症(CRBSI)32例(25%)、腹腔内感染症31例(24%)で、原因不明が47例(36%)であった。採血日の抗菌薬投与は9例(7%)を除いて実施されたが、その感受性適合率は57%(74/130)であった。28日死亡率は40%(52/130)で感受性適合症例では30%(22/74)感受性不適合症例では54%(30/56)と有意差があった(p=0.006)。感受性不適合56症例で分離された微生物数は63で抗MRSA薬の必要な細菌(MRSA、MRCNS、腸球菌の一部など)が48%で真菌が21%であった。【考察】血液培養施行時の投与抗菌薬の感受性適合率は低かった。当院ICUでは入院患者の入室がほとんどであるため、経験的治療では抗MRSA薬など耐性菌を考慮に入れた抗菌薬の選択が望まれる。特に腹腔内感染症での腸球菌のカバーのための抗MRSA薬やCRBSIでの真菌のカバーは常に念頭におき患者の状態により投与を考慮する必要がある。