第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

感染・敗血症 症例

[P7] 一般演題・ポスター7
感染・敗血症 症例01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場7 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:曽我部 拓(大阪医療センター)

[P7-4] 異なる基礎疾患を背景に発症した小児ニューモシスチス肺炎2症例の検討

中山 祐子, 久保 達哉, 中村 美穂, 余川 順一郎, 山本 剛史, 北野 鉄平, 佐藤 康次, 野田 透, 岡島 正樹, 谷口 巧 (金沢大学附属病院 集中治療部)

【背景】ニューモシスチス肺炎(以下PCP)は、様々な細胞性免疫不全宿主における代表的な日和見感染症である。疾患背景の異なる小児患者において発症したPCP 2症例を通し、小児PCP患者における早期診断と早期治療の重要性につき再認識させられたため報告する。【臨床経過】症例1:10か月男児。易感染性を疑わせるような病歴は入院時までみられず。入院2週間前から発熱、咳嗽が出現し、努力性呼吸、チアノーゼを認めるようになり紹介医に入院した。両側肺野にびまん性のすりガラス状陰影を認め、KL-6 7600と高値であった。当初、百日咳罹患を念頭に加療を開始されたが、数日の経過で低酸素血症の進行、努力性呼吸の増悪をきたし、当院ICUに入室した。人工呼吸管理を開始したが、肺コンプライアンス低下のため呼吸管理に難渋した。IgG 10mg/dLと異常低値、IgM 405mg/dLと高値であり、当初より何らかの先天性免疫不全症候群に合併したPCPもしくは重症細菌性肺炎を想定し、ST合剤を含めた抗菌薬治療、ステロイド投与を開始した。徐々に呼吸状態は改善し、15日間で人工呼吸管理を離脱でき、18日目に一般病棟に転棟した。後に喀痰・胃液PCRでPCPと確定診断された。患児の遺伝子検査の結果、CD40 ligand欠損症と判明し、現在外来でガンマグロブリン定期補充、ST合剤予防内服を継続しながら骨髄移植待機中である。症例2:4か月女児。カポジ肉腫様血管内皮腫に対し、ステロイド投与・化学療法中であった。発熱に引き続き、2日ほどの経過で急激な酸素化悪化をきたしICU入室、人工呼吸管理を開始された。両側肺野にびまん性のすりガラス陰影を認め、後に喀痰・胃液PCRでPCPと確定診断された。高圧の呼吸器設定を要し、チューブリークのため換気が維持できず、体格に比しサイズの大きい挿管チューブを使用せざるを得ない状況であったが徐々に呼吸状態は改善し、12日間で人工呼吸管理を離脱した。その後一般病棟でST合剤予防内服をしながら化学療法を継続している。【結論】乳幼児期におけるPCPは、化学療法などの後天性免疫不全状態に合併するだけではなく、先天性免疫不全症候群の初発症状として発症することもあり、急激な経過で致死率も高いとされている。PCPの高リスク患者を見極め、早期に診断し治療を開始することで、より良い転帰が期待できると思われた。