第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

補助循環

[P72] 一般演題・ポスター72
補助循環03

2019年3月2日(土) 14:00 〜 15:00 ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小林 誠人(公立豊岡病院 但馬救命救急センター)

[P72-4] ECMOおよびCRRT導入により救命し得た侵襲性肺炎球菌感染症の1例

小坂 眞司, 芝原 司馬, 康 美理, 齋藤 倫子, 並木 みずほ, 武田 宗和, 矢口 有乃 (東京女子医科大学 救急医学講座)

【背景】侵襲性肺炎球菌感染症は、2013年度より感染症法五類全数届出の対象疾患で、その報告数は毎年増加し、死亡率は約6%である。菌血症に伴う肺炎球菌性肺炎は高齢者で多いが、治療にExtracorporeal Membrane Oxygenation(ECMO)管理を要した症例報告は少ない。
【臨床経過】症例は65歳男性。既往に1型糖尿病でインスリン治療、びまん性汎細気管支炎がある。発熱、体動困難で当院救急搬送。来院時、意識JCSI-2、体温38.5℃、脈拍119bpm、血圧75/40mmHg、呼吸数27回、酸素飽和度85%(リザーバマスク6L)。血液ガス検査(リザーバマスク10L)で低酸素血症(PaO2 56.6mmHg)、高乳酸血症(Lac 5.6mmol/L)、血液検査で炎症反応上昇(WBC 10070/μL、CRP 7.75mg/dL、PCT 17.47ng/mL)、腎機能障害(BUN 25.2mg/dL、Cre 2.14mg/dL)、迅速検査で肺炎球菌抗原陽性、CT検査で両肺下葉にAir-bronchogramを伴うすりガラス影と小葉間隔壁の肥厚、無気肺を認めた。肺炎球菌性肺炎による敗血症性ショックの診断でICUへ入院。人工呼吸器管理、ノルアドレナリン持続投与、抗菌薬TAZ/PIPCを開始するも、FiO2 1.0でP/F Ratio 69.8、収縮期血圧65-80mmHgであり、Veno-Arterial ECMO導入。以後、P/F Ratio 80未満が持続したが、心臓エコー検査でEF60%と心収縮が良好であり、Veno-Venous ECMOへ変更。急性腎障害、乏尿に対して、Continuous Renal Replacement Therapy(CRRT)を施行。非定型肺炎のカバー目的でAZMを、痰のグラム染色でブドウ球菌が検出されVCMを追加。血液培養中間報告でGNRが検出され、抗菌薬をMEPMへ変更。第7病日P/F Ratio 397でECMO離脱。血液培養でStreptococcus pneumoniaeが検出され、侵襲性肺炎球菌感染症の診断となった。抗菌薬をCTRX単剤とし、腎機能の改善と自尿の増加に伴いCRRTを離脱。第11病日抜管、第18病日糖尿病内科へ転科。
【結論】1型糖尿病を基礎疾患にもつ侵襲性肺炎球菌感染症による敗血症性ショックに対し、VA ECMO導入後VV ECMOへ切り替え、集学的治療を行い救命し得た一例を経験した。敗血症性ショックに対するECMO導入の早期判断、介入は重要である。